中小病院の生き残り策、「小規模地域で手間のかかる患者を引き受ける」
■ 質の評価指標は、「過程(プロセス)」の公開─松田委員
「地域医療への貢献度」を評価するもう1つの指標として、松田晋哉委員(産業医科大医学部公衆衛生学教授)がDPCデータの公開を改めて要望した。
松田委員は、「地域医療への貢献をどのように評価するかという観点から、研究班の考えをまとめた」と述べた上で、「病院機能係数の考え方について⑨」(同研究班作成)について説明した。
これは、西日本の約30の都道府県の地域医療計画に明記されている「4疾病5事業への対応」「医療従事者の確保」「情報公開への対応」などをDPCでどのように評価するのかを検討したもので、「それぞれに該当する指標の大小を評価するのではなく、指標を公開している、あるいは指標が公開されているということを評価してはどうか」と提案した。
松田委員はまた、がんの症例数が多い病院など、「ボリュームについては既に公開されている」とした上で、「手術に関しては『外保連試案』をもとに公開用データを作成するという考え方(ボリューム+技術力)もある」と提案。手術に関する公開用データの作成は、▽「外保連試案第7版」とレセプト電算マスターファイルをKコードで対応させる ▽輸血K920はすべて除外する─などで、MDC5(循環器系疾患)とMDC6(消化器系疾患、肝臓・胆道・膵臓疾患)については、「外保連試案」をもとに各病院の状況を解析した。
松田委員は、「手術に関しては、『外保連試案』でMDC別に難易度が設定されているので、この難易度のデータをうまく使うことによって各病院の手術をする技術力を評価することが可能ではないかと考える。単に、ボリューム(症例数)で評価するよりも、難易度を含めた評価をすることが、現在あるデータから可能だ」と述べた。
また、質の評価指標としては、「ストラクチャー(構造)」「過程(プロセス)」「結果(アウトカム)」のうち、「結果(アウトカム)」の評価については、「重症度を完全に補正する方法論がない現状で公開することは誤解を招く恐れがある」とした。
その上で、「過程(プロセス)」に関連した指標の作成・公開を評価することを提案。松田研究版の分析によると、急性心筋梗塞入院時のアスピリンやβブロッカーの投与は病床規模によるばらつきが見られた。退院時のアスピリン投与は、400床以上の病院と特定機能病院の高い数値を出した。
「肺炎における血液培養のタイミング」について、松田委員が「抗菌剤の使用が先行している大変なデータ。考えられないデータ」と説明すると、委員がざわめいた。
指標の公開に関する係数の考え方として松田委員は、DPC対象病院はDPCデータを作成するための投資部分を係数で評価することを提案。「DPC対象病院すべてに係数が付くことになるが、それでいい」とした。また、「DPCデータが公開されることにより、地域における医療機関の役割が明確になり、機能分化と連携が促進される」と述べた。