約4割の産科施設、今年度中に出産費用増額を予定―厚労省研究班
■「分娩費安い公立病院が医療崩壊の元」
分娩費用を増額できない理由には、「地域住民の所得が低い」22.0%、「近隣の私的同業施設と競合している」20.3%、「近隣に市議会等の意向で分娩入院費用が安い公立中核病院がある」15.1%、などが上がった。
分娩費用1件当たり平均額を設置主体別に見ると、「都道府県立」が約37万2千円と最も低く、「市町村立」約38万7千円、「厚生連」約41万2千円、「社会保険」約42万千円と続く。最も高い「大学病院」は約47万9千円だった。
また、研究班が分娩費用を「低額」とする38万円以下の施設は、回答した都道府県立病院の60.4%、市町村立病院の54.5%を占めており、大学病院は12.4%にとどまった。「低額」施設は、病院と診療所でそれぞれ30.2%、20.5%を占めた。
研究班は記者会見で、「地方の公的病院が分娩費を非常に安く据え置いてきており、現在の医療崩壊の基礎になってきた」との見解を示した。また、「採算を度外視した病院が多く、しかもそれらは地域の中核病院。都道府県立や市町村立の分娩費用が低額であることが明らかになり、近隣医療機関への影響が大きい」と、産科診療所などに与える影響を示唆した。
公立病院の分娩費用が他の設置主体に比べて低額になることについて、「公立病院の分娩費用は市議会などで決まるため、病院独自で決められないのが問題」と、分娩費用を安く抑えることが市議の住民に対するアピールになっているとした。平均額が最も高かった大学病院については、「あまりにも安いと考えている。お産の時に出て行ってそこだけで処理するのではなく、安全を担保するためによる当直をしたりしているが、その対価が全く考慮されていない」と述べた。