「出来高払い」と「包括払い」の微妙な関係 ─ 中医協(6月24日)
■ 「係数をどのように付けるのか。一律ではない」 ― 日医
[藤原淳委員(日本医師会常任理事)]
少し基本的な質問だが、係数をどのように付けるのか。もちろん、一律ではない(医療経営に与える影響度が違う)と思う。その辺の手順や方式は決まっているのか。
現在、「出来高払いの病院」と「DPC(定額払い)の病院」との間に、どのぐらいの収益の差があるのか? 私の認識では、1.2~1.8倍ぐらいと思っている。これは言いにくいかもしれないが、言える範囲内で教えていただきたい。
▼ 診療報酬の点数は中医協で決まるように思えるが、具体的な点数配分は保険局医療課が持つ強大な専権事項になっている。2年に1回のペースで4月に改定される診療報酬は、年明けに中医協から厚生労働大臣に答申されるが、実は答申した後に通知や疑義解釈が出されて初めて具体的な点数配分が決まる仕組みになっている。点数を取るために必要な条件を操作することによって、点数配分を変えることができる。つまり、どの項目にどのような点数を付けるかが保険局医療課の手中にあり、国民からはおよそ見えない。2010年度改定が決まる来年始めごろに、「救急医療を高く評価した」とマスコミが宣伝しても、その後の通知などで算定条件を絞れば「絵に描いた餅」と化す。藤原委員の質問は診療報酬の決定に関する核心部分を突いたものだが、あまり突っ込み過ぎると診療所の点数に影響が出るので、寸止めにしたいところ。
[遠藤委員長(中医協会長)]
えっと......、後者の議論(出来高払いと包括払いの収益差)は、何に関係するのか? 本日の「機能評価係数」の議論と。
[藤原委員(日医)]
いや、あの、日本(医師会)......、いや、「診療側」としては、「出来高払い」と「DPC」の二本立てという主張をしている。だから、その中で全体像を見ていく場合には、そういったこと(収益差)も考えながらやる必要があるのではないか。
[遠藤委員長(中医協会長)]
属性が同じ医療機関において、「DPC病院」と「DPCを算定していない病院」との間の収益差を知りたいと......。
では、前者の質問(係数の重み付け)は、今後、どういう形で機能評価係数を入れていくのかという(作業手順に関する)プロセス?
▼ 「新たな機能評価係数」が最終的に10項目だろうと4項目だろうと、項目数には意味がない。各項目(係数)にどのぐらいの医療財源が振り向けられるのか、そして増収につながる項目(係数)を取れるのがどのような医療機関なのかが最大の問題。例えば、A病院は5項目を取れるがB病院は1項目しか取れないとしても、B病院の方が増収になって、A病院が減収になることもあり得るという恐ろしい話。各係数にどのぐらいの医療財源を充てるのか、この権限を保険局医療課が手放すはずがないので、公開することには後ろ向きのまま。このような点数配分の情報が開示されない限り、中医協の議論は永遠に閉鎖的な状態が続き、「実質的に非公開」といえるだろう。
[藤原委員(日医)]
要するに、いろんな項目に"要素"があると思う。点数の付け方次第で、(医療機関が)よくやったとしても......。
(各項目に対する)点数(配分)をそれぞれ適切にやれば、それはそれで問題はない。それだけ、多要素のものが盛り込まれる(大病院も中小病院もそれぞれの特徴や機能が平等に評価される)。
しかし、例えば10項目に絞り込んで、その点数の付け方で、(係数の点数が)0.1(という高い点数)もあれば、0.01もある(10倍の格差がある)とした場合、それって......、項目を絞り込む意味がどれだけあるのかなぁーということになるわけ。
これ、一律に付けるわけじゃ、ないんでしょ? そこのところを、どういうふうにするか。これはもう、基本的な問題だと思うが。まぁ、説明できる範囲でお願いしたい。
▼ まさに、"禁断の質問"。あまり追及し過ぎると危険。
[遠藤委員長(中医協会長)]
事務局(保険局医療課)、(回答は)よろしいだろうか。
[保険局医療課・宇都宮啓企画官]
医療課企画官でございます。
まだ現時点では......、つまりあの......、医療機関の機能を評価するものとして、どのようなものがふさわしいかという議論をまだやっている段階なので、今後、数字の決め方等について、どのようにやっていくかということは、まだ現時点では、具体的なプランというものは......、まだ......、えー......検討して......いるところではない。
▼ 宇都宮企画官は、このようなかわし方がとても巧い。各項目の経済的な重み付けの議論はしないで絞り込むという方針は、6月8日のDPC評価分科会で決定している。
[遠藤委員長(中医協会長)]
ということだそうです。今後の議論ということ。
後者の議論(出来高払いと包括払いの収益差)は、(診療報酬改定の基礎資料にするために実施する)「医療経済実態調査」で、ある程度分からないだろうか? DPC対象病院と、そうでない病院。
[藤原委員(日医)]
後者(の数字)はつかまえられると思うので、まぁ、公開できなければやむを得ないと思うところ。
[遠藤委員長(中医協会長)]
何かありますか、事務局。
(しばらく沈黙。相談している様子)
[宇都宮企画官]
す、すいません、もう1回、質問の意味を......。
▼ まさか、こんなテーマから議論が始まるとは予想していなかったのではないだろうか。
(しばらく沈黙。事務局、相談中)
[遠藤委員長(中医協会長)]
後者の質問(出来高払いと包括払いの収益差)は、前回の「医療経済実態調査」では分からないのだろうか......。
[藤原委員(日医)]
日本医師会としては......、あ、すいません。
ある程度、その辺ははじき出している部分はある。先ほど申し上げたように、(DPCを導入していない出来高払いの病院とDPC(定額払い)病院との間の収益差について)1.2~1.8倍ぐらいという認識でいる。厚労省としてはどのようにとらえているか。
ということを聞いたわけだが、なかなか答えにくいということであれば、やむを得ないと思う。
▼ とりあえず引っ込めた形。診療所の再診料引き下げをめぐる議論の際の「防具」になるので、今後も小出しに使うだろう。
[遠藤委員長(中医協会長)]
まぁ、その種の議論は恐らく、点数を今後どのように設定していくかという議論の中に入ってくると思うので、その過程でそういう視野からの指摘を受けたいと思う。
今の段階では、どういう病院の機能に点数を与えるかという議論をしているので、その議論に集約していきたい。(以下略)
▼ 遠藤委員長はコスト分析に基づく診療報酬改定を重視している。次期改定では、改定率が決まる前に点数配分の議論を始める意向を6月3日の基本問題小委員会で示している。