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小児救急医療の充実など求める―日医の来年度予算概算要求への要望

 日本医師会の内田健夫常任理事は6月27日、厚生労働省の2010年度予算概算要求に対する日医の要望について、小児医療分野の一部を明らかにした。当直医や救急担当医、へき地で働く医師に対する人件費補助のほか、小児救急医療の充実、小児デイケア・ショートステイ施設の整備などを求めるとした。(熊田梨恵)

 都内で開かれた日本小児医療政策研究会で講演した。日医が厚労省の2010年度予算概算要求に対して要望する小児医療分野の施策として、内田氏が示したのは次の通り。

▽多様な保育支援策の実施
▽保育システム相談員の養成・普及
▽女性医師の勤務環境改善支援
▽周産期医療のオープンシステムによる連携体制構築支援
▽小児救急医療の充実▽子どもの健康を守る地域専門家総合連携事業拡充
▽学校における心の健康支援事業
▽学校健診での生活習慣病健診、運動器健診導入
▽学校の耐震化、バリアフリー化
▽新型インフルエンザ対策
▽ペリネイタルビジット充実
▽児童手当支給緩和
▽医療費自己負担補助
▽出産育児一時金増額
▽小児デイケア・ショートステイ施設等の整備
▽子どもの心の診療医確保に関わる研修会等の費用補助
▽新生児聴覚スクリーニングの予算化、治療・療育体制整備
▽妊婦検診の公的負担増額
▽当直医師・救急担当医師・へき地医療従事医師等の人件費補助


 このほか、今年度の補正予算で新しく始まった「地域医療再生基金」についても説明。基金は、医師派遣機能の強化など地域医療の課題解決に取り組む医療機関などに財政支援するもので、各都道府県は医師確保や救急医療、勤務医の労働環境改善などについて具体的な改善策を盛り込んだ「地域医療再生計画」を2次医療圏ごとに策定することが必要になる。

 内田氏は基金について、医師会が政府に働き掛けたことによって実現したものとした上で、「基金は、私の考えではイニシャルコスト。ランニングコストには当たらない。ランニングコストは診療報酬をアップすることで手当てする。1兆円を3年間に分けて付けるいうことで、今年は3100億円」と説明。100億円規模の基金が10か所、30億円規模が70か所予定されているとした。
 
 また、この基金の特徴として、100%国庫補助のため地方自治体が予算を付ける必要はなく、基金として積み立てて、5年間の事業として運用するものとした。基本的に2次医療圏単位での設置だが、医師確保など内容によっては都道府県単位も可能とした。加えて、「運用にも使える。医師確保などで地域枠に補助金を付けるというところにも『医師確保対策』という名目があれば使えるということ」とした。
 
■「婦人科検診の無料クーポンは寝耳に水だった」
 このほか講演会の中で、今年度予算で子宮頸がんや乳がん検診の無料クーポンの配布などに216億円が計上されたことについての裏事情を明かし、「我々は全く関与しなかった。どこが関係したかというと、公明党の女性議員が財務省に働きかけて予算を付けた。厚労省も全くその話を知らず、寝耳に水ということで、現場の体制が全く整っていない中でいきなり金だけぽんとついてクーポン券が配られたということ」と述べた。
 
 
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