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ニュース〜医療の今がわかる

新型インフル エビデンスないからこそオープンに議論を


――そう言う村重先生も医系技官ですよね。

私は日米での臨床を経てから入省したので、ちょっと毛色が変わっていると思います。多くの医系技官が、大卒後すぐ、または見学程度の研修後に厚生労働省に就職し終身雇用を前提に2年毎に部署をローテーションするという人事制度なので、どの分野に関しても素人で、そのうえ法律のことも分からない、憲法感覚すらないから平気で人権侵害の政策を立案する、そういう状態になってしまっています。誰でもこのような人事制度に組み込まれたらそうなってしまうので、彼らもかわいそうなのです。

――ケチョンケチョンですね。

 こんな集団が、国の公衆衛生をリードしている、リードしているとも言えない状態ですが、これでは国民が非常に不幸だと思います。

 新型インフルエンザ対策にしても、何のためにやっているのか誰も分かってないんです。健康局長が省内の対策会議で「この対策で感染ピークを抑制することに何の意味があるのか」と尋ねた時に、その場に居合わせた20人ぐらいが誰も答えられませんでした。

 各国のインフルエンザ行動計画を眺めてみると、結構いい加減なものもあるのですけれど、米国だけはこれでもかというぐらいたくさんあります。その中の集大成的なCDCのものを見ると、対策の目的は、①医療機関を守る。予測されるピーク時には、医療ニーズが、医療機関の物的・人的資源を大きく上回ると明記されていますが、それでも、患者が押し寄せて重症患者に対応できないケースを少しでも減らすために少しでも患者ピークを抑制する。そのために学校閉鎖とか渡航自粛もするんだと書いてあります。次に②ワクチンが出てくるまでの時間を稼ぐ。ダイレクトに死亡リスクを下げられる可能性がある、最も有効なものはワクチンなので、それができるまで時間稼ぎとして対策をする、と書いてあります。もう一つ③死亡者数、感染者数を抑制するというのも書いてありますが、ただ3番目に関してはエビデンスがない話なので、彼らも掲げないわけにいかないという立場にあるのだろうと思います。

 いずれにしても、国民の命を守るという目的が明確だから多少の経済損失があったとしても、行政が介入するということに対して国民の合意が得られるんだと思います。翻って日本の厚生労働省は一体何をしているのでしょうか。結果が使い物にならない調査の命令や朝令暮改の通知を乱発して医療機関を疲弊させて、患者さんを受け入れる能力を落としているのですから、本末転倒としか言いようがありません。要は、何のために経済損失を出してまで対策をやっているのかという所が全く整理されていない。この国の公衆衛生を担っているはずの医系技官は勉強不足で、この期に及んで未だに何のために対策をしているのか分かっていない。国民として心底恐ろしいと思います。

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