中医協、今こそ大胆な改革を
【医療課の専権事項をなくせ】
そして、中医協改革にとって何よりも必要なのは、事務局(保険局医療課)の改革。中医協は、診療報酬の支払側と診療側、そして国民の意見を代表する公益委員らが議論して合意に達するという建て前になっている。
しかし、このような「三者構成」とは名ばかりで、公益委員の任命のほか議題の提示、委員との事前調整や議事運営など広い範囲にわたって保険局医療課が仕切っており、"医療課のワンサイドゲーム"とも言うべき状況になっている。
厚労省はこれまで、医療費抑制策を進めるために、中医協という場を利用して、一定の方向に誘導したり、はしごを外したりしながら、「勘と度胸」ともいえる行き当たりばったりの政策を繰り返してきた。「事務局」という立場を隠れ蓑にして医療を歪めてきたとの批判もある。34兆円の医療費がどのように使われているのか、その流れを熟知しているのは医療課の担当者であり、具体的な情報が国民に開示されない。
このため、中医協での診療報酬の決定はあまり意味がない。中医協が診療報酬改定を厚労相に答申した後、医療課が膨大な通知を発出して施設基準をいじくるため、実際に医療機関が取れる点数や、具体的な財源配分はそこで決まってしまう。
勤務医対策の「入院時医学管理加算」や、脳卒中の後遺症患者を減らすための「超急性期脳卒中加算」など、一見すると良さそうに思える診療報酬改定なのに、ふたを開けてみると"絵に描いた餅"だったということが往々にしてある。
つまり、診療報酬の具体的な配分決定が「医療課」という一部署の専権事項になっており、国民からおよそ見えないところに問題がある。ぜひ、厚労省の言いなりにならない委員を起用して、医療課の嘘やからくりを見破ることから中医協改革を進めてほしい。
もちろん、この時期に診療側の委員を大幅に変更すると、「無用の混乱を招くのではないか」との懸念もある。しかし、それは杞憂だろう。次期改定に向けた議論はほとんど進んでいないので、混乱するような素材がない。むしろ、現在の日医委員を一掃したほうが今後の議事はスムーズに展開する。