中医協、今こそ大胆な改革を
「長妻さんは年金がご専門だから」─。民主党が掲げる中医協改革に、業界紙の記者などから疑念の声が上がっている。鳩山政権が発足して初めての開催となった9月18日の中央社会保険医療協議会(中医協)は、まるで何事もなかったように議事が進んだ。「肩すかしを食らった」とこぼす記者もいる。中医協改革はいつ実施されるのだろうか。(新井裕充)
民主党の政策集(詳細版)は、「中医協(中央社会保険医療協議会)の構成・運営等の改革を行います」と明記している。また、「民主党政策集─私たちのめざす社会─」には、「中医協の抜本改革」として次のように書かれている。
「決定過程に問題が指摘され、また贈収賄事件を生んだ中医協については、委員構成の見直し(診療側、支払側、公益側それぞれ同数とする等)、逐語・発言者明記の議事録作成とその全面公開等即時の改革を行うとともに、中医協に変わる新たな機構を検討します」
中医協改革は、2004年の「中医協汚職事件」を契機に06年に実施されているが、実効性は乏しい。当時の報道によると、「中医協汚職事件」では、歯科医に有利な発言を依頼した診療側委員が贈賄の疑いで、厚労省を天下りした支払側委員が収賄の疑いで逮捕・起訴された。この事件を契機に中医協の見直し論議が始まったが、厚労省は05年2月に「中医協の在り方に関する有識者会議」を立ち上げ、内部からの改革姿勢を見せた。結局、診療報酬改定の主導権を手放したくない厚労省の抵抗でうやむやに終わったといえる。
同会議がまとめた改革案に基づき、病院団体を代表する委員と公益委員の増員のほか、団体推薦制の廃止などの改革が06年度から実施されたが、その後も関係団体から中医協委員が選出される構造は根強く残っている。このため、診療所と病院の連携など、中医協が医療全体を幅広く議論する場にはなっていないとの指摘もある。
また、診療側を長い間牛耳ってきた日本医師会(唐澤祥人会長)の発言力が以前よりも弱まったとはいえ相変わらず強く、内科系を重視した点数設定、開業医の利益偏重、審議の大幅な遅延などの弊害を生んでいるとされる。
こうした中で、中医協委員の任期切れ問題が浮上している。「病院の勤務医師が逃げ出すほど忙しくなっているのか、疑問を感じる」などと述べて、病院団体の関係者から大ブーイングの日本医師会のほか、新薬の研究開発を促進させる「薬価維持特例」に長らく否定的だった日本薬剤師会の委員らの任期が10月1日で満了する。そこで、「これを機に中医協改革をスタートすべき」との声もある。