〔裏・自律する医療①〕「関係者一同、謝罪が必要」 出産一時金問題
医療機関への直接払いを提唱した舛添要一・前厚生労働大臣の時代に、海野教授は『「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会』委員や『周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会』委員などを務めた。日本産科婦人科学会の医療改革委員長でもあり、直接払いが決まるまでの経緯を、実際に見聞きしている。
今回は、いったい誰が何をしくじったのか。
厚生労働省の制度設計がズサンだったことは間違いない。妊婦が多額の現金を立て替えるのは大変だろうと考えたまでは良かったが、国が代わりに立て替えるのではなく、分娩施設が立て替えるように設計してしまった。しかも、妊婦の場合は事後に出産育児一時金を受け取った段階で帳尻が合うわけだが、分娩施設の場合は営みが連続しているので、分娩取り扱いをやめない限り、立て替えは常に存在し、そのタイムラグ分の収入は失われたのと同じことになる。加えて、その失われる収入に課税される。極めつけとして、厚生労働省は、この問題を事前に知っていた。
「昨年の11月27日に関係者の意見交換会が開かれた際、助産師会の人が資金ショートの問題を指摘していました。当然、対応されていると思って安心していたというのが正直なところです。言い訳になりますけど、その後、学会に対しては全く説明がありませんでしたし」
誤解を招くといけないが、厚生労働省が誰に対しても全く説明しなかったわけではない。5月29日に日本産婦人科医会に対して説明し了解を得た後、日本医師会、日本助産師会の合意も得ている。むしろ厚生労働省からすれば、手続きは全部踏んでおり、医療側がしくじったんじゃないかと言いたいところかもしれない。
実際、なぜ医会がこの問題点に気づかなかったのか、なぜ現場への説明をすぐ行なわなかったのか、誰もが疑問に思うところだろう。
(つづく)
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