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ニュース〜医療の今がわかる

「医師を強制的に配置する」 ─ 厚労OBが医療基本法の成立を求める

【答え】
① 長妻昭厚労相
② 埴岡健一・日本医療政策機構理事

 埴岡氏は、日経BP社ニューヨーク支局長、日経ビジネス副編集長、日経メディカル編集委員などを歴任した後、2004年に東京大学医療政策人材養成講座の特任准教授。ちなみに、東京大学医療政策人材養成講座の主なメンバーは以下の通り。
黒川清氏(政策研究大学院大学教授)  
信友浩一氏(九州大学大学院教授)
近藤正晃ジェームス氏(東京大学医療政策人材養成講座特任准教授)
高本眞一氏(東京大学大学院医学系研究科教授)
・矢作直樹氏(東京大学大学院医学系研究科教授)
・玉井克哉氏(東京大学先端科学技術研究センター 教授)

 自公政権下のシンクタンクである「日本医療政策機構」の代表理事は黒川清氏、副代表理事は近藤正晃ジェームス氏。東京大学医療政策人材養成講座の特任教授を務める信友浩一氏は昨年12月、日本医療政策機構のホームページの連載(緊急提言)を担当、「医師は応召義務を果たしていない」「医師は被害者意識を捨てよ」などと述べたことは医療関係者に広く知られているようだ。

 ところで、東京大学医療政策人材養成講座のメンバーが主張している「医療基本法」は、「社会保障基本法」とは性格が異なることに注意する必要がある。共産党に近い団体が主張する「社会保障基本法」は、憲法25条の生存権を具体化することが目的であり、生存権の実質化を図るもの。「医療基本法」のように、医師や看護師に一定の義務を発生させるものではない。法律の性格はあくまでも「権利の具体化」であり、国民に対する「義務付け」ではない。

 憲法25条の生存権は、国民の生命や健康を守るために必要な施策を講じることを「国」に対して義務付ける規定であり、これを国民の側から見れば「国家に対する作為請求権」であり、受益者は国民になる。つまり、救貧や防貧施策を講じなければいけないという「義務」を負うのは国。
 従って、すべての医師が国家公務員でない限り、憲法25条の具体化立法から「医師の強制配置」を導くことは憲法上難しいのではないか。憲法学説の中には、公務員や在監者など国家と特別な関係にある者の人権制約を認める考え方があるが、医師免許が国家資格であるということから直ちに同様の結論を導けるかは疑問がある。
 また、「公共の福祉」による医師の「居住・移転の自由」の制約は、相対立する権利の衝突関係がないので難しいだろう。例えば、北海道で救急受け入れ先が決まらずに死亡した患者の権利と、九州の民間病院に強制派遣される医師の権利とを利益衡量できるかという問題が残る。

 
 
 
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