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中医協の新委員は、「決して誘導されません」?

■ 次期改定に向け、22の検討項目を示す ─ 遠藤会長
 

[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
 (約2時間の総会を終え、10分間の休憩後)それでは委員の皆様、全員ご着席ですので、ただ今より第143回中央社会保険医療協議会・診療報酬基本問題小委員会を開催いたします。まず、本日の出席状況ですが、本日は全員がご出席いただいております。

 それでは、具体的な議事に入ります前に、皆様に申し上げたいことがございます。審議スケジュールが非常にタイトになっておりますので、他の審議会の状況も踏まえまして、今般、事務局(保険局医療課)に指示をいたしまして、(今後の主な検討項目例について)メモを準備していただいております。

 これは、前回改定の実施状況や検証部会における検証結果、これまでの中医協や他の審議会における議論の状況などを踏まえまして、今後検討を進めていくことになりそうな事項を私なりに考えさせていただいたものです。

【今後の主な検討項目例】
救急医療、周産期医療、小児医療、勤務医の負担軽減、初・再診料、入院料、DPC、チーム医療、リハビリテーション、在宅医療、訪問看護、がん医療、認知症対策、精神医療、感染症対策、医療安全、歯科診療報酬、調剤報酬、医療技術の適正評価(手術料等)、後発品医薬品の使用促進、後期高齢者医療制度に係る診療報酬、明細書
 ▼ 前回とほぼ同様。新しいのは、チーム医療、認知症対策、感染症対策、医療安全。なお、前回の2008年度診療報酬改定に向けた検討項目は次の通り。
【10月】
入院医療の評価、産科医療、小児医療、救急医療に関する評価、がん対策の推進、心の問題への対応、後期高齢者医療の診療報酬、後発医薬品促進のための環境整備、患者の視点の重視、訪問看護に関する評価の在り方、検査・処置などの医療技術に関する評価。
【11月】
勤務医の負担削減策、初診料・再診料などの外来医療の評価、地域における医療機関の機能分化と連携の推進、有床診療所の評価、リハビリテーションの評価、歯科診療報酬の見直し、調剤報酬の見直し、手術、麻酔、病理などの医療技術の評価、DPCの在り方、精神医療に関する評価。

 救急、周産期医療や小児医療、勤務医の負担軽減、初・再診料、入院料など数多い事項について検討いただくことになると思います。

 本来であれば、社保審の2つの部会からの基本方針が出てからの議論になりますが、およそ、そちらのほうの議論と同じような内容になるだろうと思われるものも考慮しまして、このようなメモを作成しております。先ほどの総会で申し上げましたように、改めて円滑な議論にご協力いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、議事に移ります。本日はまず、「小児医療等について」を議題といたします。事務局(保険局医療課)より資料が提出されていますので、説明をお願いいたします。

 ▼ 前回(9月30日)の議題は「周産期・救急等」で、今回は「小児医療」「勤務医の負担軽減」。上記の「メモ」に従って議事が進んでいるとも言える。中医協人事で一時中断したものの、次期改定も医療課ペースで進むのだろうか。社保審の両部会と中医協との関係も前回改定と同じ。最初に中医協が走り、"後付け"で社保審がある。前回と何ら変わり映えしない。中医協人事が決まるまでは、改定の主戦場が社保審になるか中医協になるか不明だったが、ふたを開けてみたら前回と同じ。医療課は中医協をメーンに進めていく方針と思われる。
 ただ、日医執行部が外れたことで審議がスムーズに進むという違いはある。マスコミの関心も「日医外し」に集まっているので、日医執行部3人を排除する人事は医療課にとってもウェルカムだろう。「日医外し」を隠れ蓑にして、"本命"の改革が進めやすくなった。それにしても、民主党が派手にぶち挙げた「中医協改革」はどこへ消えたのか。中医協人事に関する「足立原案」には、大胆な改革構想が示されていたが、候補の委員が中医協と社保審に分散されて骨抜きにされてしまった。厚労官僚に取り込まれてしまった長妻大臣の責任は重い。「足立原案」に入っていた診療側委員のうち、最終的に採用されたのは、▽茨城県医師会から選出する ▽嘉山孝正委員(山形大学医学部長)を選任する─の2点だけで、ほかの3人は却下され、高原晶氏(諫早医師会会長)は社保審に回されてしまった。
 今後、厚労省は2012年度の医療・介護ダブル改定で、「社会保障国民会議」の最終報告が示したB2シナリオに向けた改革を一気にやるつもりだろう。「医療機能の分化と連携」を合い言葉に中小病院を大量に減らし、医療資源の集約化を図る。前回改定からDPC関連を担当してきた宇都宮啓企画官は老健課長に異動しており、厚労省の目線は既に2012年度改定にあるといっていい。次期改定では、DPCに関連して高度急性期病院に手厚い機能評価係数を導入すれば、医療課はもう年越し気分だろう。「救急・周産期医療」「勤務医の負担軽減」など、マスコミ受けが良さそうな大義名分を振りかざし、病院と診療所の格差是正、中小病院の切り捨てなどをきっちりと進めるだろう。そして2012年、「宇都宮啓医療課長」の下で、大胆な医療・介護改革が実行される。

 

 【目次】
 P2 → 次期改定に向け、22の検討項目を示す ─ 遠藤会長
 P3 → トリアージシステムへの「誘導」
 P4 → 小児救命救急センターへの「誘導」
 P5 → 論点という名の「誘導」


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