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中医協の新委員は、「決して誘導されません」?

再開した中医協2.jpg 「決して誘導されませんから、もう少し踏み込んだ形のものを書いたほうが議論になりやすい」─。新体制で再開した中医協で、遠藤久夫会長が厚生労働省側に要望した。「シナリオはもう変わらない」という自信だろうか。民主党が掲げた「中医協改革」が頓挫したことへの勝利宣言だろうか。(新井裕充)

 委員の改選をめぐって1か月中断した中央社会保険医療協議会(中医協)が10月30日、来年度の診療報酬改定に向けた審議を再開した。議論が紛糾することはなく、委員から時折笑い声が漏れるなど終始和やかな雰囲気の中で議事が進行した。

 総会に続いて開かれた基本問題小委員会の冒頭で、中医協会長を兼務する遠藤久夫委員長が次期改定に向けた検討項目として、「救急医療」「周産期医療」「小児医療」「勤務医の負担軽減」など22項目を示した。
 9月30日の前回会合では、「救急医療」と「周産期医療」について議論した。今回は、「小児医療」と「勤務医の負担軽減」が議題。このことから、次期改定に向けた審議は「厚労省の予定通りに進んでいる」との見方もできる。

 この日、厚労省は「小児医療」と「勤務医の負担軽減」について論点を示したが、新政権での「政治主導」という方針に配慮したのか、ややあいまいな記載にとどまった。そこで、事務局を務める厚労省側に対し遠藤会長が次のように注文を付けた。
 「論点は、事務局(保険局医療課)として我々の議論を最初から誘導したくないという配慮だと思うので、どちらかというと、たたき台としては明確さを若干欠いたところがある。もう少し、事務局案という形でもう一歩踏み込んで構いません。決して誘導されませんから、もう少し踏み込んだ形のものを書いていただいたほうが議論になりやすいと思いますので、少しその辺のところも次回は修正していただきたい」

 小児医療の説明で厚労省は、「小児救命救急センター」や「トリアージ体制」などを評価する方針を暗に示した。これに対して、新任の委員から「センターと名が付くものに点数を付けるから(地域医療が)崩壊する。補助金ではなく、医療行為の内容を評価すべき」など、厚労省の方針に迎合しない意見が出された。
 こうした新任委員らの活発な発言を踏まえた上での要望とみられるが、中医協改革が挫折して既定路線に戻った安心感かもしれない。次期改定に向けた議事は、多少の"ガス抜き"をしながら、スムーズに進むことが予想される。

 もし、政治主導で診療報酬の決定プロセスを見直すなら、厚労省が示すデータや検討項目、論点などにメスを入れなければいけないが、そんな気配は全くない。厚労省にとって厄介な「日医執行部」の3人がいなくなったことから、今後は厚労省の誘導に従って円滑に進んでいくだろう。なお、小児医療について厚労省がどのような方向に「誘導」したいのか、詳しくは次ページ以下を参照。


 【目次】
 P2 → 次期改定に向け、22の検討項目を示す ─ 遠藤会長
 P3 → トリアージシステムへの「誘導」
 P4 → 小児救命救急センターへの「誘導」
 P5 → 論点という名の「誘導」

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