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小児科医は増加している? 辞めている?

■ 「小児科医がいる病院に集中する」 ─ 安達委員
 

[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
 (佐藤敏信課長の説明後)はい、ありがとうございました。小児医療について議論したいと思います。ただ今、事務局(保険局医療課)から小児医療、特に小児救急について、それに関連した基礎的なデータと、前回改定でどんなことが行われていて、それに対してどれぐらい算定しているか、あるいは届出があるかということについての報告があったわけです。

 最後に、5ページに「論点」、これはある意味、「たたき台」ということで、事務局(保険局医療課)の「たたき台」が5つほど出てきました。

第4 論点
1 小児入院管理料を算定する医療機関について、小児救急医療等の病院の果たしている役割に応じてきめ細かく診療報酬上で評価することをどう考えるか。
2 小児の初期救急について、地域の医師が参加することにより病院勤務医師の負担を軽減する取組の診療報酬上の措置についてどう考えるか。
3 保護者の不安等による時間外の軽症受診患者に対する診療報酬上の措置についてどう考えるか。また、多数の受診者から、緊急度の高い受診者を優先して治療する体制に関する診療報酬上の評価についてどう考えるか。
4 重篤な小児患者の受け入れ体制を確保する観点から、超急性期の小児の救命医療やそれに引き続く急性期の小児専門の集中治療が行える専門医療機関の診療報酬上の評価についてどう考えるか。また、患者搬送等も含めた医療機関間の連携体制に関する診療報酬上の評価についてどう考えるか。
5 小児に対する手術等の診療報酬上の加算についてどう考えるか。
 我々は、この「たたき台」について議論する、あるいは「たたき台」以外のものもありますので、それについても議論する。そういう形で議論するのが生産的だろうと思うわけですが、ご自由にご意見を承りたいと思います。安達委員、どうぞ。

[安達秀樹委員(京都府医師会副会長)]
 まず現場から、現場的な現状認識ということで申し上げますが、参考資料の図表の7番に「時間外に受診した理由」があります。複数回答です。

 ▼ トップは「急病」、次いで「早期治療希望」、「非改善」、「小児科専門医診療希望」、「通常時間受診不可」などの順。このうち、「小児科専門医診療希望」と「通常時間受診不可」はほぼ同数だが、「通常時間受診不可」が丸で囲んである。佐藤課長は、この部分を強調した。

 「急病」とか、「早期治療希望」というのが当然多いわけですが、3番目に「小児科専門医診療希望」というのがございます。これと「急病」「早期治療希望」というのは、現場では完全に重なっているわけです。
 何を申し上げているかと申しますと、受診される患者さんのご両親が病院にお電話をくださいます。何を一番最初に問われるのか。「小児科の専門医が当直をしていますか?」ときかれます。「内科しかいませんよ」と言いますと、おいでになりません。ということは、小児科の医師がおられる病院に非常に集中的に、「急病」や「早期治療希望者」が集中していく。それが、ずっと言われている小児科医の疲弊の大きな原因の1つだという認識です。

 そういう中で、いろいろな改善方法があるんだと思いますが、今、私の手元に「日本小児科学会」と「日本小児科医会」からのご要望を頂戴しておりますので、それに添って申し上げます。参考資料の1ページの図表の1(小児医療の体制)。
 今、「日本小児科学会」が一番対応に苦慮しておられるのは、二次小児救急の中核である「地域小児医療センター」、ここの所が算定できる点数設定がない。先ほどご説明になった(小児入院管理料の)中に......。
 先ほどのご説明で言えば、「小児入院管理料1」(4500点)と「小児入院管理料2」(3600点)の間を埋めるものということでございます。1と2の間を埋めてほしい。その間に、この「地域小児医療センター」が算定できる点数を設定していただいて対応したいというご要望を頂いているということをまず申し述べさせていただきたいと思います。

 ▼ 安達委員の席は前回まで藤原淳委員(日本医師会常任理事)が座っていた場所。議論の口火を切るのはいつも藤原委員だったが、日医の主張を一方的に展開して議論が先に進まないことが多かった。この安達委員の発言に、「今までとはちょっと違うぞ」と思った傍聴者もいたのではないだろうか。確かに、中医協の雰囲気は変わった。しかし、あくまでも事務局(保険局医療課)が用意した枠組みの中での議論にすぎない。これは変わらない。

[遠藤久夫委員長(中医協会長)]
 はい、ありがとうございます。あの......、あ、北村委員、どうぞ。

[北村光一委員(経団連社会保障委員会医療改革部会長代理)]
 トンチンカンな質問になるかもしれませんが、私もいくつかの病院で小児科の先生方のご苦労を見させてもらいました。本当に大変だと思います。大変なご苦労をなさっている......。それで......。

 先ほどの(診療報酬改定の基礎資料にする)「医療経済実態調査」の結果の35ページ(こども病院の収支状況)ですが、平成20年度(改定)では、入院料とか診療体制の加算など、これまでのいろいろな問題点を考慮してさまざまな対策を立てたということで、35ページの表だけを見させていただきますと、確かに収益が上がって、まだ赤字ではあるけれど大きく改善されているなあと。やはり、それなりの効果があったんだなあというのがよく分かります。

 この内訳、収入と支出を見させていただきますと、収入は大幅に増えていますが、支出が全部減っている。コストは全部減って収入が全部増えている。当然これは......、経営から考えても収益が上がるのは当然なんで......。

 そうすると、診療報酬改定を行った成果はコストの所ではどういうふうに反映されているのかなーという、非常に素人的な疑問を持ちました。もし今、事務局(保険局医療課)でご説明できるのであれば伺いたい。

 ▼ 安達委員が鋭い問題提起をしたが、すぐに遮断された。今後もこんなペースで進むだろう。言いたいことだけ言わせながら、厚労省の下書き通りにスイスイ進む。「改定時期に間に合わないのでは」との報道も一部にあるが、そんな心配をする必要はなさそうだ。
 同日の総会では、▽「医療経済実態調査」を総会に先立って審議する「調査実施小委員会」を開催しないこと ▽同調査の結果に基づいて改定の議論を進めること ▽総会と基本問題小委員会の委員を同じにして審議を効率化すること─などが了承された。これで、1か月間の遅れは十分に取り戻したといえる。総会で佐藤課長は、「ゴールは(前回改定と)同じ」と宣言しており、改定時期が先延ばしになる可能性は極めて低い。
 なお、「診療報酬改定の検討チーム」を設置することをもって「審議のプロセスを見直した」、つまり「中医協改革の一環」ととらえる記者もいるようだが、そうは思えない。検討チームの委員候補にDPC評価分科会の松田晋哉委員(産業医科大医学部公衆衛生学教授)が入っていることを考えれば、DPC関連が中心になることは容易に察しが付く。DPCの議論はほとんど終了しているが、「係数化」という重要な作業が最後に残っている。「正確なデータの提出」「入院期間の短縮」「診断群分類のカバー率」などをどのように「係数」に落とし込むか。この係数次第で病院間の配分が変わるため、中小病院にとっては重大な問題だが、これさえ固まってしまえば次期改定の作業は実質的に終了といえる。「薬価維持特例」もこれまで相当議論を尽くしている。医療課長にとって、今回はかなり楽な改定といえるのではないだろうか。ただ、新任委員に「レクで刷り込む」という作業はなかなか大変だろうとは思う。

[遠藤久夫委員長(中医協会長)]
 あくまでも推測のことぐらいしか......。あるいは推測も軽々には言えないかもしれない......。いかがでしょうか、事務局。

 ▼ このように厚労省の回答を誘導することは、国民を代表する立場の「公益委員」として公平性・中立性を欠くことにならないか。これでは、どちらが「医療課長」なのか分からない。

[保険局医療課・佐藤敏信課長]
 (困惑したような声で)いや......、あの......、会長から今お話がありましたように、(笑いながら)ちょっと......、難しくて......、簡単にはお答えできません。(中略)

 ▼ 「役者だなあ~」といつも感心してしまう。佐藤課長は「前回改定で手厚く評価した影響だと思う」などと説明。「ヒアリングで実態に近いものが出てくるだろう」などとかわした。
 この後、「前回改定がこども病院の改善にどのぐらい寄与しているのか」(小林剛委員・全国健康保険協会理事長)、「手術料を2倍にしてほしい」(邉見公雄委員・全国公私病院連盟副会長)、「技術評価分科会は何を検討しているのか」(遠藤委員長)など、個別の質問や要望が続いた。1つのテーマで議論が進まない。散漫になるように誘導しているから仕方がないが......。


【目次】
 P2 → 「小児科医がいる病院に集中する」 ─ 安達委員
 P3 → 「補助金とか、そういうのじゃなくて」 ─ 嘉山委員


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