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ニュース〜医療の今がわかる

小児科医は増加している? 辞めている?

■ 「補助金とか、そういうのじゃなくて」 ─ 嘉山委員
 

[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
 先ほどの北村(光一)先生のご質問、疑問点に答えますと、これはやっぱり、こども病院が建ってから10年ぐらい経っているんですよ。原価償却費が減っているんですね。
 それからもう1つは、人件費が減っている。(小児科医が)辞めている。小児科医が辞めているから、給料が減っている。それだけです。
 というのは、小児医療はですね、昨年度の審議会でも問題にしたんですが、大都会でないとなかなか......、こども病院だけでは成り立っていかないところがあります。
 東京、大阪、神奈川ぐらいの(都市部の)こども病院以外はですね、かなり今、地方はピンチな状態で小児科医が辞めている。ですから、お給料が減って(コストが下がって)いるというのがちょっと表れたのではないかと思います。

 あと、(厚労省の)データで、「小児科があまり減っていない」というお話だったのですが、やっぱり現場の声として言いますと、女性がひじょーに多いんですよ、小児科っていうのは。そうすると、女性の働く社会環境が整っていませんので、(厚労省の)このまま数で小児科医を計算するのは非常に無理がある。

 ▼ 冒頭で安達委員が小児科医不足の問題に少し触れたが、北村委員(経団連)に話題をそらされて議論が続かなかった。再び、嘉山委員が小児科医の問題に話を戻した。事務局(保険局医療課)としてはまずい展開なので、話題をそらしてほしいところ。

[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
 はい......。あの......、もう1つの議題である「勤務医の負担軽減」と非常に関係する話だと思います。(坂本委員が挙手) 先ほど、安達委員から......。あ、失礼しました。坂本専門委員、どうぞ。

 ▼ 日本看護協会の久常節子会長は「女性が働き続けられる環境の整備」を強く訴えているので、これに関連する発言かと思ったが......。

[坂本すが専門委員(日本看護協会副会長)]
 「論点」の所について、ちょっとお話をさせていただきたいのですが、患者の視点というものを考えてみますと、小児と救急というのは、補助加算のほうで、病院においでになるまでの(親の)不安を軽減して効果を出しているというふうに伺いましたし、私も、おいでになる前にお母さんたちの不安を軽減させて、トリアージしているということも聞きました。(中略)

 ▼ トリアージ体制が整っている病院を診療報酬で評価することを主張した。以後、トリアージに関する議論が10分以上続いた。こうして、議論が本筋から外れていく。もちろん、トリアージも重要論点だと思うが、その前に議論すべきことがあるのではないか。ところで、先ほどの安達委員に対する北村委員の対応にも見られるように、新任委員の「突っ込み」に対しては、正面から反論せずに話題をそらす。そんな暗黙の了解ができているのかもしれない。

[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
 (邉見公雄委員が、地域医療を守るためには住民や行政、マスコミなどが一体となった活動を展開する必要があると主張したことについて)全くその通りだと思います。ただ、それを診療報酬とどういうふうに関連付けるかという、そこら辺のモデルがあれば議論になる......。嘉山委員、どうぞ。

[嘉山委員(山形大)]
 この診療報酬......、例えば、「センター」と付くとそこの医療費が上がるとかですね、そういう付け方をしてきたので、地方の小児医療などが潰れたんです。つまり、山形は唯一、私が反対したものですから、「周産期母子医療センター」をつくらせなかったんです、県に。それをつくっちゃうと、崩壊しちゃうんです。(他の委員や傍聴席から笑い声)

 例えば、あれにはいろいろな制限があって、何人の産婦人科がいなきゃいけないとか......。しかし、現実には何の不都合は起きていないんですよ。そして、NICU(新生児集中治療室)で300グラムの赤ちゃんを診て、ちゃんと助けているんですね。そこに診療報酬......。「センターではないから」ということで、お金が来ない。そうするとかなりモチベーションが落ちて、それで崩壊していく。そういうことが起きている。

 それがこの委員会の......、今までの中医協が細かい所まで見なかったというところではないかと思う。診療報酬は......、医療行為の内容で診療報酬を入れちゃえばいいんです。補助金とか、そういうのじゃなくって。
 「どういう医療行為をしたか」で診療報酬を認めれば、地域医療も壊れない。(地方は)人数もそんなに多いわけじゃですから。東京と同じ考え方でやってしまうから、おかしくなってしまう。その辺を診療報酬に反映していただければと思います。

[遠藤委員長(中医協会長)]
 ご意見はその......、算定の要件が厳しすぎて、それが地方ではとても達成できないような状況にあるんだ......ということで、これは診療報酬の問題ということで、そういうご提案と言いますか、問題提起だったと思います。これは重要な議論になります。

 ▼ ......というまとめでいいのだろうか。

 それで......、まだいくつも意見があると思いますが......。(ここで小児医療の議論を終わりにしようとするが) あ、失礼しました。西澤委員、どうぞ。

[西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)]
 (厚労省が示した)「論点」についてはこれで良いと思います。さらに細かくこれから検討していければいいと思いますが、これから議論するために、やはりもう少し資料がほしいという気がします。(以下略)

 ▼ 中小病院の立場から何かを提案するのではなく、「資料を出してほしい」といういつも通りの発言。これに対し、佐藤課長が「最新のデータを使用している」と一蹴。遠藤委員長が必要なデータがあれば追加するよう指示を出して、小児医療の議論はひとまず終了した。今後も、こんなペースで進むのだろうか。
 ところで、重篤な小児救急の問題を現場の医師らに聞くと、「患者数が少ないから集約化しかないでしょ」という声もある。これに対し、「救急医療全般」について集約化の是非を尋ねると賛否両論がある。ただ、「医師が足りない」という点では現場の意見は一致しているように思える。
 しかし厚労省は、「医師は不足しているのではなく偏在にすぎない」という考えを捨てていない。救急医療の集約化を目指すスタンスも一貫している。厚労省の医政局指導課は2007年12月から08年7月にかけて、「救急医療の今後のあり方に関する検討会」を開催し、「ER型救急」のモデル事業などを提案したが、"ハコモノ行政"に対する批判などを受けて頓挫。中間取りまとめでは、「医療機関、第二次救急医療機関については議論を行ったが、方向性を十分に示すところまでには至らなかった」とした。
 ただ、「特定の診療領域を専門とする医療機関や高度救命救急センターのあり方についても重要な課題であり、引き続き、議論を行っていく必要がある」と書き残した。これを受け、今年3月に開催されたのが、先述の「重篤な小児患者に対する救急医療体制の検討会」だった。こうして振り返ると、一度決めた方針を絶対に崩さない執念のようなものを感じる。先輩から後輩へと受け継がれている彼らの"役人魂"は、中医協の委員をちょっといじくったぐらいでは変わらないだろう。

 
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【目次】
 P2 → 「小児科医がいる病院に集中する」 ─ 安達委員
 P3 → 「補助金とか、そういうのじゃなくて」 ─ 嘉山委員

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