小児科医は増加している? 辞めている?
小児救急の改善策として厚生労働省は、「小児科医の数は増加している」とした上で、「トリアージ体制」や「小児救命救急センター」などを2010年度の診療報酬改定で評価する方針を示している。小児科医や看護師らが充足しているなど救急受け入れ体制が整っている病院を手厚く評価する意向だが、「地方はピンチな状態で小児科医が辞めている」との異論もある。(新井裕充)
10年度改定の議論を再開した10月30日の中央社会保険医療協議会(中医協)の基本問題小委員会で厚労省は、小児医療について現状や課題などを説明した上で、次期改定に向けて5項目の「論点」を示した。
現状に関する説明の中で厚労省は、「小児科医の数は、平成6年から平成18年までの間に13,346人から14,700人と約1,350人増加している」とした。
その上で、軽症患者が9割以上であること、1~4歳の死亡率が高いことを説明。軽症患者への対応策として、「医師に代わって看護師などのコメディカルが患者の振り分けをする」という意味でのトリアージ体制を診療報酬で評価する方向性を示した。
また、1~4歳の死亡率が高い状況を改善するため、PICU(小児集中治療室)など重篤な小児患者を専門的に受け入れる病床を評価する方向性を打ち出した。
意見交換で、安達秀樹委員(京都府医師会副会長)は小児科の医師がいる病院に集中している。それが小児科医の疲弊の大きな原因の1つだ」と指摘、小児の二次救急病院が広く算定できるような点数設定を求めた。
嘉山孝正委員(山形大学医学部長)も、「地方はピンチな状態で小児科医が辞めている」と指摘。「小児科医は女性が非常に多いが、女性が働く社会環境が整っていない」として、医師数に関する厚労省のデータが実態を反映しているかを疑問視した。さらに、「センターと付くとそこの医療費が上がるなど、そういう(診療報酬の)付け方をしてきたので、地方の小児医療などが潰れた」という辛口の発言も飛び出した。
小児救急をめぐっては、医政局指導課が中心となってPICUの全国整備に力を入れている。今年3-5月にかけて、「重篤な小児患者に対する救急医療体制の検討会」で議論し、7月に報告書を取りまとめた。
同検討会では、重症の小児を24時間体制で受け入れる「小児救命救急センター」を推進する厚労省側に対し、「実際に何人の医師がいるかを考えないと現実化しない」など、マンパワー不足を問題視する意見があった。また、小児救急の専門医の育成、救急医と小児科医の連携、救急搬送システムなど、「ハコ」の整備と別の観点からの意見が相次いで議論が錯綜した。(詳しくは、最も議論が紛糾した4月23日の議事録を参照)
その後、委員らの指摘を受けて厚労省は「小児救命救急センター」の文字を一度は引っ込めたが、7月の報告書で復活させたという経緯がある。次期改定では、「小児救命救急センター」などを診療報酬で評価する方針とみられる。なお、安達委員と嘉山委員の発言は次ページ以下を参照。
【目次】
P2 → 「小児科医がいる病院に集中する」 ─ 安達委員
P3 → 「補助金とか、そういうのじゃなくて」 ─ 嘉山委員