国立大運営費交付金、「位置付けの見直しを」-事業仕分け
「事業仕分け」を行う行政刷新会議のワーキンググループは25日、国立大が2004年度に法人化されて以降、毎年1%ずつ削減されている国からの「国立大学法人運営費交付金」について、位置付けなど在り方自体を見直すよう求める判定を出した。議論は文科省から国立大への出向職員や、大学経営と教育研究のバランスの問題などに集中。大学附属病院については、法人化以降の収入が全体で「1225億円の増」と数字が読まれた以外、議論はなかった。(熊田梨恵)
国立大が法人化した2004年度以降、大学の運営費交付金は年に1%ずつ削減されており、多くの大学から経営難を訴える声が上がっている。法人化前に医学部を有した国立大の場合、病院建物の建造や医療機器の購入などの際に国から一部融資を受けている。各大学は大学病院で得た報酬から毎年返還しているため、病院収入が増えても経営状況の改善につながりにくい。医学部のある42国立大学が抱える国からの借入金総額は1兆35億1132万4000円(国立大学協会調べ)。このため、大学附属病院の運営が困難に陥っているとして、国立大学医学部長会議常置委員会(安田和則委員長)は交付金増額と借入金の解消を求めていた。
民主党はマニフェストで国立大学病院への運営費交付金の水準回帰をうたっている。文科省の来年度予算の概算要求では、国立大学法人運営費交付金に今年度予算を13億円上回る1兆1708億円を計上。医学部の教育環境整備や授業料免除枠の拡大、救急や周産期医療に関する診療部門への支援を行うとしていた。
事業仕分けWGの議論で財務省側は、運営費交付金が削減されている一方で、「大学事業費自体は増えている。教育経費・研究経費で見ると、平成16-20年度までで700億円余の増加。他の研究費補助金や外部資金の増加によって収入自体伸びている」と主張。加えて、余剰金が発生しているとして、「運営交付金は700億円減少しているが、余剰金が平成16-20年度合計で2000億円余、2300億円ぐらいと思うが発生しており、『目的積立金』として積み立てられて各大学の判断で使われている」と指摘。民間的な経営手法の導入や学生のニーズに合った教員配置など、大学運営の在り方を見直すべきと主張した。