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12月18日の中医協 (ブリーフィング)

■ 基本問題小委員会② ─ 長期入院患者に係る診療報酬(資料説明)
 

[保険局医療課・佐々木健課長補佐]
 (資料)「診─2」(長期入院患者に係る診療報酬)です。「長期入院は慢性期の疾患」ということで療養病床......ではなく、一般病床の中での(長期入院患者の)取り扱いは前回改定から長い経緯があります。
 今回の資料の基本的な目的は、前回改定でやった内容を......、新しいメンバーもいますので、流れ全体をご理解いただくという趣旨で作ってみたということでございます。参考資料を見ていただきながらのほうが理解しやすいかと思います。

 簡潔にお話ししますと、もともとの議論は「特殊疾患療養病棟入院料」という、脊髄損傷とか重度の意識障害とか、そういう難病患者さんが入っていただく病棟について、(参考資料の)2ページにもありますように算定医療機関が激増してきたという時期(平成15~17年)がございました。

 これについては、平成18年度の診療報酬改定で、(当時の)「特殊疾患療養病棟入院料」(を算定できる病床として療養病床を廃止したほか)一般病床、精神病床部分について「平成19年度末に廃止を予定する」として、「平成20年度改定でどうするか」というところから議論が始まっています。
 それを決定するために、「特殊疾患病棟にどういう患者さんが入っているか」を調査した結果、脳卒中や認知症の方が非常にたくさん入っていて、本来この点数(特殊疾患療養病棟入院料)の趣旨とする脊髄損傷とか神経難病のような方が期待されたほど多くないということが分かった。

 そうすると、例えば同様の患者さんが療養病棟に入っておられるということからすると、処遇の点でかなり格差があるというようなことも議論されまして、平成20年度の改定で「点数自体は存続するが特殊疾患療養病棟の趣旨を明確にする必要がある」ということで(対象疾患を見直し)、脳卒中の後遺症の患者や認知症の患者......(を対象疾患から除外した)。

 ▼ また、「特殊疾患療養病棟入院料」を「特殊疾患病棟入院料」に名称変更した。

 当然、ほかの疾患を合併している方、筋ジストロフィーや重度の意識障害、脊髄損傷などがあれば(特殊疾患病棟入院料の)対象にはなりますが、単純に脳卒中の後遺症とか認知症ということだけであれば対象とはしないという方針を決めました。

 それと同様の概念が(参考資料)4ページと5ページの「障害者施設等入院基本料」で、これも一般病棟の点数ですが、やはり近年、非常に増加傾向にありました。
 これも本来であれば児童福祉法が規定する「肢体不自由児施設」とか(重症心身障害児施設)、「国立療養所」(などが算定する点数)で、重度の肢体不自由児(者)や筋ジストロフィー、難病患者さんなどが(おおむね7割以上)入っていただくという趣旨だったのですが、やはりこれも先ほどの「特殊疾患病棟」と同時に調査した結果、脳卒中の後遺症や認知症の方が非常に多いということが判明したので、こういう(難病の)方々に入院していただく施設を確保していくということもありまして、やはり脳卒中、認知症というものを対象から除く(ことを決めた)。

 ▼ 脳卒中の後遺症患者を「特殊疾患病棟」から外すことはやむを得ないとしても、「障害者病棟」から外したことには現場からの批判が強い。脳卒中の後遺症患者の中には「重度の肢体不自由者」と言える患者もいるため、障害者病棟の本来の趣旨に反しないとの声もある。結局、「病棟の趣旨がどうのこうの」という小難しい話ではなく、医療費抑制を目的とした改定にすぎない。

 (病棟の趣旨にかなった患者構成が)「8割、7割」と言いますが、(特殊疾患病棟が8割であるのに対して)こちら(障害者病棟)の場合は「7割」ということです。
 その場合、実はまた話が込み入ってくるのですが、平成20年(改定)まで(90日を超えて入院すると診療報酬が減額になる)「老人特定入院基本料」という包括の点数がありました。

 ▼ 入院期間が90日を超えると点数が分岐する。医療の必要度が高い重度の場合、点数はフラットのまま下がらない。しかし、そうでない場合は減額。「75歳以上」の場合も減額。つまり、「75歳以上という年齢で点数が下がる仕組みは後期高齢者医療制度が創設される以前からあったんだ」ということが言いたいのだろう。なお、点数が下がると支払いの負担が減るので患者にとっては都合が良いと考えがちだが、決してそうではない。急性期病院としては低い点数のまま長期入院させておくわけにはいかないので、退院や転院を促してベッドを空けようとする。つまり、追い出されてしまう。回復期や慢性期医療を"ドル箱"にすれば、急性期病院の患者をどんどん受け入れてくれるので、急性期病院のベッドコントロールもスムーズに行くはず。つまり、急性期の後方病床が確保される。しかし、回復期や慢性期を締め付けているので、「急性期」 → 「回復期・慢性期」という流れが渋滞を起こしてしまう。

 (90日を超えて入院すると減額になる)その(老人特定入院基本料)の中に、「75歳以上」という年齢要件と、かつ12項目の「特定除外」に該当しない患者の点数が下がるというルールを持っていましたので、その中にも「脳卒中の後遺症」「認知症」(を減額する)という話がでてきた。それ(脳卒中、認知症)についても併せて整理して、「75歳以上」で「脳卒中の後遺症、認知症」は点数が下がる。

 要するに、(病棟の趣旨にかなった患者構成が)7割という「病棟の中に占める割合」の問題と、それから「入院料の点数が包括化されて下がる」という所の両方にかかわってくるので、話がちょっと込み入ってくるということでございます。
 (参考資料)6ページ、7ページでは、(前述した特殊疾患病棟、障害者病棟と)同じような規定が一般病棟にもありまして、そこでも90日以上の場合に脳卒中、認知症を外すということをしました。

 ▼ まさに、"四方固め"とも言うべき改悪。高齢化に伴って増え続ける脳卒中、認知症の患者の入院料が医療費を膨らませるので、ここにメスを入れれば大幅な医療費抑制になる。


【目次】
 P1 → 保険医療材料専門部会 ─ 平成22年度保険医療材料制度改革の骨子(案)
 P2 → 総会① ─ 医療機器の保険適用
 P3 → 総会② ─ 先進医療
 P4 → 基本問題小委員会① ─ 後期高齢者に係る診療報酬
 P5 → 基本問題小委員会② ─ 長期入院患者に係る診療報酬(資料説明)
 P6 → 基本問題小委員会③ ─ 長期入院患者に係る診療報酬(論点)
 P7 → 基本問題小委員会④ ─ 長期入院患者に係る診療報酬(支払方式)
 P8 → 基本問題小委員会⑤ ─ 処方せん等の変更
 P9 → 基本問題小委員会⑥ ─ 地域特性への配慮
 P10 → 基本問題小委員会⑦ ─ 宿題事項

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