医療は本当に成長産業になるのか
薬師寺 外国の患者さんを呼ぶための課題は何か。
高橋 たとえば中国の人たちに、日本の取り組みが伝わっていない。どういう情報を、どういう風に伝えていくかが重要になる。言われたように医学は一流であるならば、それをどうやってブランド化していくのかが重要。他国は、相当戦略的にやっている。
土屋 質の高い医療を求めて金に糸目はつけずに国を移動するという例は、以前から少ないながらもあった。これが爆発的に増えるということは、いくら中国が豊かになったといっても、そうは考えられない。タイやマレーシアなどの例は欧米並みの医療を安く受けられるもの。この二つは全く違う。日本は東アジアの中で一番物価が高いわけだから、安さでは売れない。質の高いものをめざすにしても、中国人の大半は日本の医療を知らない。ではどうしたらよいかだが、北京にある中日友好病院が20数年前に贈ったまま放ったらかしになっているので、日本の最新鋭機を寄付して医師や技師も送りこんで、いわゆるアンテナショップのようなものにすればいい。
事前規制からの脱却
山田 講演で夏目先生が例に挙げた韓国の延世大学病院には私も衝撃を受けた。アメリカの最新の治療が数カ月遅れで全部入っている。あちらには財閥がついていて金に糸目をつけずに病院に投資している。そのうえさらに国も支援している。ああいうものに対して、医療だけで日本がアジアの諸国に訴えていこうというのは難しいかもしれない。先ほどから何度も出ている高い医学のレベルを売りにするしかないんじゃないか。その際に問題になってくるのは、混合診療の禁止だ。基礎研究から臨床研究へと橋渡しする際に非常に大きな壁になっている。混合診療を例外的に認める制度の高度医療を、基礎から臨床への橋渡しの部分については、国がどんどん適用を認めていくということが望まれる。
土屋 国にちゃんとやれ、というのでは何も解決しない。事前規制そのものがおかしい。むしろ事後のモニタリングに移らないと、日本の医療はよくならない。
夏目 介護保険ができて、いったん医療から介護・福祉は切り離されたけれど、我々の地域では医療が福祉の方も相当に面倒みないと成り立たない状況になってきている。IHN(インテグレーテッド・ヘルスケア・ネットワーク)という一貫した形でないと支えられないという気がしてる。
土屋 介護では、コムスンの問題があったりしたのもあるが、施設数の足りないのが難題だ。社会福祉法人だけでなく、株式会社も含めた他の法人でも入れるようにしないと何ともならない。株式会社が悪だと決め付けるのではなく、きちんとやるところは認める必要がある。まさに事前規制でなく、事後にどうやってコントロールするかという話だ。
古川 この辺の規制が緩和されればよくなるという考えがあれば聴かせてほしい。
高橋 まずは医療ビザになるだろう。今は本当に手続きが煩雑。ただし規制は国内だけにあるわけではない。そのあたりの緩和も図られないと、なかなか難しいかもしれない。逆に韓国などは紛争の仲裁制度があったり、それから保険的な部分でも、産業化の支援が進んでいると思う。
薬師寺 市長、最後に一言。
吉田 今、古川知事と話をして、鳥栖や久留米まで入れた形で一つの固まりとして医療クラスターと定義して、医療ツーリズムの可能性についても新しく研究をしてみようかと話がまとまった。今日は、そういう成果があった。