【緊急】佐藤章福島県立医大名誉教授追悼 村重直子の眼 湯地晃一郎・東大医科研助教
湯地
「そうですね。署名活動を通じた啓蒙活動を行っています。さらに公費助成を推進する根拠としては、医療経済上の利点があります。子宮頸がんの公費助成には年間210億円の費用がかかると推定されますが、対して、子宮頸がんで亡くなる方、子宮頸がんの治療にかかる費用、治療で子宮を取ってしまうなど後遺症による経済的損失を合計すると年間400億円になり、ワクチンを接種することによって差し引き190億円プラスになると言われています(今野良他, 産婦人科治療 97(5): 530-542, 2008)。こういう理由もあって、世界の先進国ではほとんどの国が接種への公費助成を行っているんですが、日本ではワクチンが認可されるのも世界で99番目と遅れましたし、公費助成のシステムが構築されていません」
村重
「自治体によっては助成に乗り出しているところもありますね。そういった論文も書かれたとか」
湯地
「はい、日本には現在1747の自治体がありますが、子宮頸がんの公費助成を独自に行っているのは138自治体にすぎません。地方自治体間のワクチン助成格差が存在しており、これをこのまま放置しておくと、検診率が低いことも相まって、子宮頸がんの発症率・死亡率に将来的に大きな地域格差が出てくることが危惧されます。この内容の短報を英国医学雑誌のLancetに投稿しましたところ採択され、近くpublish予定です(Yuji K et al, Gardasil: from bench, to bedside, to blunder. Lancet, in press. )。
村重
「署名活動は現在も続行中ですか」
湯地
「6月16日で署名は終了し、現在集計を行っています。参議院選挙終了後に、関係各所に提出予定となっています。署名活動を通じ、患者さん・ご家族・一般市民の方々と医療従事者が共に手をとりあって、問題に取り組んだ時に大きな力が発揮されることを痛感しました。さらに電子署名においては、インターネットのリアルタイム性、伝播性を実感することができました。今後も、患者さん・ご家族・一般市民の側を向いた活動に取り組んでいきたいと思っています」