率直に話し合ってみたら、役者が足りなかった
上
「武藤先生を前に、患者が抗議をしたというのは画期的。癌研の良いところだ」
嘉山
「がんセンターだって、患者さんを交えて既にやっている。先ほどの話で言えば、最初はスタンドプレーにならざるを得ないにしても、国民的議論を起こすために必要な情報発信をしていくことだろう」
土屋
「片木さんの問題に話を戻すと、一番の問題は、癌研の中では相談できる人がいなくて、片木さんの所へ相談しなければならなかったこと。看護師が診療に立ち会えればよいが、そこまでの人数いない。だったら医療クラークのような人間でもいいから、バイスタンドしている直接の当事者にまず投げかけできるようにすべきだろうと反省した」
嘉山
「がんセンターでは、看護師をつけた相談外来というのを始めた。それから、その外来を担当するかもしれない医師全員にコミュニケーションスキル講習を受けさせた」
清郷伸人氏(混合診療訴訟原告)
「目の前に苦しんでいる患者さんがいたら何とかしたいのが主治医だというお話だった。それが阻まれているのは、制度の問題ではないか。強烈なペナルティがあるから」
上
「中村先生、規制に関する質問だが」
中村
「規制緩和のスーパー特区を用いるというのも手ではあるだろうが、もっと根深い問題がある。日本の市場は魅力がなくなってきている。その上に治験もやりにくい。これでは韓国で治験をやられても仕方ない。規制の問題に関して言うと、無償の臨床研究なら保険と併用できるようにするだけでも随分と進む」
嘉山
「山形大学時代に文科省には言って機能特区というのを進めさせている。完全な混合診療解禁にすると、医者の中には金儲けに走る人もいるので、国家戦略としてやる部分を明確にすべき。ドラッグラグの問題に関して言えば、55年通知をもっと活用するよう中医協でも働きかけている」
土屋
「基本に立ち返ると、なぜ通知の所で議論しなきゃいけないのかという問題がある。規制改革会議に行ってみて分かったことだが、厚生省には課長通知があまりにも多い。他省庁では大抵が局長通知だし、昭和55年の通知なら、とっくのとうに法律になっているはず。それは厚生省が悪いというのではなく、そのように医療界が要求してこなかったせいだ。法律に則って、専門家が自律していかないとうまくいかない」
嘉山
「医者は55年通知を結構使ってた。でも保険支払基金がチェックしてしまう。彼らの言い分は、承認されてない使い方を認めて、もし何か起きたら責任を問われるのでないかということだった」