何か足りない、「ドラッグ・ラグ」の議論
■ 未承認薬をどうするか
「ドラッグ・ラグ」という場合、主に2つのケースが挙げられる。1つは、海外ですでに承認されている薬が日本ではまだ承認されていないケース。医療関係者らが「未承認薬」と言う場合、たいていこれを指している。
2つめは、ある病気に対する効能や効果があるとしてすでに国内で承認されているが、別の病気などに対して承認されていないケース(適応外)。
例えば、肺がん治療薬として承認されているが乳がんには使えないような場合を「適応外」と呼ぶ。今回の中医協で"近道"が認められたのはこの「適応外」の薬。
ここで、ちょっと疑問がある。ドラッグ・ラグを本気で解消しようとするなら、未承認薬も適応外と同様の扱いにするほうが一貫するのではないか?
この日の中医協でも診療側委員からこのような要望が相次いだが、中医協の公益委員、支払側委員は否定的だった。医療費との関係だろうか。
しかし、未承認薬はマーケットが小さくて不採算になるがゆえに製薬企業が乗り気ではないとの声もある。未承認薬も適応外も医療費への影響がさほどないなら、未承認薬だけを今回の枠組みから外す理屈が分からない。有効性や安全性の問題だろうか。
「アメリカ人と日本人は足の長さも肌の色も違うんだから、未承認薬は厳しく審査しなきゃ」
厚労省がこう考えているかは分からない。
【目次】
P2 → 未承認薬をどうするか
P3 → 医療費は増えるか
P4 → 医師の裁量権を拡大するか
P5 → 患者に不利益はないか
P6 → 副作用被害を防止、救済できるか
P7 → ドラッグ・ラグは解消するか