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ニュース〜医療の今がわかる

何か足りない、「ドラッグ・ラグ」の議論

■ 医療費は増えるか
 

 新しい枠組みの下、早ければ8月30日から保険適用になる医薬品はわずか5品目。この先、「適応外」をどんどん認めたとしても、投入される公的医療費は大したことないという判断だろうか。会議終了後、厚労省の担当者もそういう説明をしていた。

 今後、どのぐらいの数の適応外薬が薬事承認前の段階で保険適用になるかは分からないが、お金で買える"生命の値段"と公的拠出の必要性とのバランスをめぐる議論があってもいい。
 ある製薬企業の関係者は「あと数か月生きることができるか、そういうところでしのぎを削っているのが現状」と言う。

 今年1月、公益側の関原健夫委員(日本対がん協会常務理事)が高額な「重粒子線治療」を全国に普及することに反対した。設備の維持管理などに多額の費用が掛かることを挙げた上で、「人のお金を使って治療を受けるわけだから」などと語気を強めた。

 8月25日の中医協でも、公益側の森田朗委員(東京大大学院法学政治学研究科教授)が同様の指摘をした。
 「薬事承認を『早くする』という点は私も全く同じ意見だが、これは本来、1号(支払)側がおっしゃるべき意見かもしれないが、ここで問題になっているのは要するに、『承認されていない薬に対して保険を適用するか』という話。保険の原理がまた別にあるわけだから、みんなで拠出してリスクを分散して保険適用するわけだから、『どう保険を適用するか』という基準の話がまずあると思う」

 なお、この日の議題に「医療費の動向」が挙げられていたが、時間が押していたこともあり遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)は「すでに公表されている資料ですので」と次回に繰り越した。
 しかし、未承認薬・適応外薬の問題と医療費は密接な関係があるだろう。保険で認めるべき範囲の設定はいかなる原理・原則に基づくのか、国民に見える客観的な基準の策定を期待したい。


【目次】
 P2 → 未承認薬をどうするか
 P3 → 医療費は増えるか
 P4 → 医師の裁量権を拡大するか
 P5 → 患者に不利益はないか
 P6 → 副作用被害を防止、救済できるか
 P7 → ドラッグ・ラグは解消するか


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