村重直子の眼15 長尾和宏・長尾クリニック院長(3)
3回目です。
長尾
「帝京大学病院で多剤耐性菌が出ましたね。あれは医源病だと、医者は何をしているんだと、医者の責任じゃないかというご指摘がネット上にあったわけです。まあたしかにそうです。けど本当に医者の責任なんだろうか。先生どう思われますか。例えば抗生剤の使い過ぎやっていうけど、国民のニーズがあって後押ししてきたのもあるんじゃないですかと、一緒に考えなくちゃいけないと思うんです。医療費の問題も一緒だと思うんです。医療費が高いのもね」
村重
「病院の感染症対策で、院内感染をなくすとか、多剤耐性菌をなくすとかいう話は、もちろん医療関係者が努力するのは当たり前のことなんですけれど、そこに対して必要な人件費を払えるだけの医療費がない、お金がないのに何をやれというのか、丸腰で闘えと言われているのと同じだということと、もう一つは原理的にどんなに頑張ってもゼロにはならないわけです。患者さんたちがたくさん集まる場所、具合の悪い人たち、感染してる人がもちろんたくさんいる場所というのは、感染症のリスクが最も高い場所なわけですよね。わざわざ危険な所に皆さん来ておられるわけですが、感染をゼロにしろと言われたら、患者さんをゼロにすればバイ菌もゼロになりますよという話にしかならないと思うんです」
長尾
「だから、そういうことをネットで書いたんです。そうしたら患者さんから、ブワーと反論が来て、それがまた楽しいんだけど、そのレベルから始めないといけないという一つの例ですよね。なんで長尾はこんなこと書くんだと、警察が入って当然じゃないかと、人が死んでるんだから医者が悪いに決まってるじゃないかと、なぜそれを擁護するんだと、そういうことから説明していかないといけない。別に擁護はしてないけど、責任はあるけども、犯罪だと言われたら微妙だと。どこでも菌は検出され得るし、あれに限らず永遠にああいうことは起こってくるわけです。僕はいつも言うんです。病院ほど危険な所はない。病院に入るなら殺されても仕方ないと思ってから入ってくださいと。実際には、今はどこでもそうなんですが、何かあるとすぐ救急車を呼んで病院へ行けるはずだ、最高の医療を受けられるはずだ、治って当然だと思ってる。だけど治って出てきたのはラッキーな人やなあと思っててですね、そうでしょう」
村重
「そうです」