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ニュース〜医療の今がわかる

村重直子の眼15 長尾和宏・長尾クリニック院長(2)

 昨日の続き、2回目です。

長尾
「この本『さらば厚労省』で一番感心したのは、看護師さんのことを最後に書いていただいていたことなんです。『現場からの医療改革推進協議会』は本当に素晴らしいなあと思うんですけど、少し偏っているなというのが本当のところありまして、たとえば去年であれば生と死であるとか、在宅というキーワードはどこにもなかった。で実は、医療崩壊といった時に、現場には看護師さんがいないんです。7対1で病院に取られちゃって、ほとんど巷には残っていない。在宅とか偉そうに医者も厚労省も言っているわけです。だけど、看護師が全く枯渇して、訪問看護師とか地域に看護師がいない、これをもう少し育てていかないといけないのが、一番私の仕事と思ってまして、ここに最後にちゃんと看護師のことを書いていただいてて、嬉しいなと。これが大事なんですよね」

村重
「本当にコメディカルの方が、数も必要ですし、もっともっと頑張っていただきたいなと思っています。先生の本に公ではなく個の判断が大震災の時には命を救ったということが書いてあって、自宅が全壊したにもかかわらず1週間泊まり込んで休みなく働き続けた看護師さんのエピソードや、非番だった看護師さんもお父さんが病院がきっとお前を必要としているだろうと大事な娘さんを車に乗せて送り届けてくださったとか、栄養士の方と給食の方が米屋さんを回って米を集めたとかですね、こういう方々の何というんですかね、純粋に患者さんのために働けるということ、しかも専門性をもって一人ひとりの判断があって、現場の多様な何が起こるか分からない状況に対応してくれているというのが、日本の素晴らしさであり、医療のあるべき姿だと思いますし、それをもっと増やして育てていくようなことができるといいなあと思うんですけど」

長尾
「そういう風に思っていただいている先生には、またどんどん偉くなられて国を動かしていただきたいなあと」

村重
「いえいえ」

長尾
「だってそうでしょう。そういう役割がありますよ。現場で腕を磨いたり感じたりした後で、いつかはまたそういう立場に帰っていってほしいし。しばらくは、厚労省の外から声を出していくんですよね。出さないですか」

村重
「現場の方たちが日本の医療を支えているので、そういう方たちに実状を知っていただきたいというのが、この本を出した一つなんです。知ることによって、皆さん専門家なので、それぞれに考えてそれぞれに行動されるんじゃないかと思うんですよね。一人ひとりの患者さんにとっても、自分や家族の治療方針をどうするかというところの判断もありますし、そういう一人ひとりの判断を、皆さん『お上』に頼らずにしていただきたいし、それを支えるためにはもっともっと色々な情報を私たち専門家が出していって、判断材料を提供していくのが一番大事なことなんだろうなあと思っています」

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