村重直子の眼15 長尾和宏・長尾クリニック院長(1)
元厚生労働省大臣政策室政策官の村重直子氏が在野のキラリと光る人たちと対談していく好評のシリーズ。村重氏が多忙につき、前回から1カ月半空いてしまい、楽しみにしていた皆様には申し訳ありませんでした。お待たせした分だけ、今回は特に密度が濃くて面白いです。ご登場いただいたのは兵庫県尼崎市で勤務医10人のクリニックを開業し、在宅医療にも積極的に取り組んでいる長尾和宏氏です。長尾氏の発言は、関西風のイントネーションに変換してお読みください。5回に分けてお伝えします。(川口恭)
長尾
「厚労省を辞められて後悔してません?」
村重
「いえ全然」
長尾
「そうなんですか。厚労省で、ガンガン活躍されてたんじゃないかなと思っていて、それが何で辞めないかんのかな、いうのが僕ら末端には全く分からなくて」
村重
「法令事務官のスタンスと医系技官のスタンスは違うと思うんですね。私は医者なので、専門家としての考えを言っていく立場だと思っていて、そうするとずっと厚労省にいると、自分が腐ってしまうというのを感じていて。私は後半は大臣の直属だったので政治任用のような形で、自由に発言させていただきましたけど、前半の普通の役人生活と言いますか、役人の人事の中で与えられただけの仕事というのは、既定路線を自分一人で変えることはできないわけですよね。医系技官集団の権限拡大のために動くのが前提で、国民のためにというのはないわけですよね」
長尾
「ないわけですか」
村重
「結果として国民に与える影響はネガティブなものがほとんどだと思っていたので、早く辞めた方がいいと」
長尾
「なるほど」
村重
「一人ひとりの医系技官にとっても、国民にとっても不幸なことなので、早く辞めた方がいいと思います。新規採用をストップした方がいいと思ってるんです」