村重直子の眼15 長尾和宏・長尾クリニック院長(5)
長尾
「僕の悩みもそこにあるんです。すなわちですね、法令順守しながら医者のフリーダムを保証してあげるという。現場に行って両立させようとしたらかわいそうなのは分かるんで、現場の人間が一番つらいんです。一昨日も近畿厚生局の懇談会というのがあって、みっちり講習会を受けてきたところです」
村重
「あれは誰のためにあると思いますか。患者のためではないですよね」
長尾
「全くないです。何のためなのか」
村重
「突き詰めて考えると、結局は役人の権限拡大と医療費抑制のためです。医療費を抑制するのも結局は権限拡大なんですよね。そのために皆が苦しんでいるのは、すごく変だと思います」
長尾
「変です。だから患者さんにもね、医者にこういう風にかかりましょうという教育をしてこそなのにね、医者ばっかりイジめて。最初はみんなマジメに一生懸命にやろうと思ってたのに、段々と50歳になった頃には、まあ適当にやってればいいわになってくるわけです。燃えるものがなくなってくるんです。開業医の宴会で聞くのも夢のない話ばっかりです」