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ニュース〜医療の今がわかる

「大地震でジャーナリスト、医療者はどう動いたか―被災地からのレポート」 ②

■ 小出重幸氏(読売新聞編集委員)①


[小出重幸氏(読売新聞編集委員)]
 私は今日は医療、医学の取材者という立場ではなくて、原子力の方の取材者という立場でお話しさせていただきます。

 これまでの皆さんのお話の中にもありましたけれども、今回の事態が数百年、千年に一度の地震、それから津波ということだけでしたら、ここまでいろんな行政機関もどこもあくせくとしなかったんじゃないかと思いますけれども......。

 その中で、一番大きな問題の1つが原子力発電所のクライシス、事故ということです。今回は国際的なIAEAの尺度の中で最も重大な事故というレベルの7ということになりましたけれども......。

 簡単に、ここ(スライド)にあるように、どうして起きたのか、それから、おさらいになりますけれども、原発って一体何なんだろうかという順番でお話しさせていただきます。

 全部やると長くなるかもしれませんので、適当なところで時間がきましたらそこで切って、必要でしたら後のディスカッションでお話しさせていただきたいと思います。

 原子炉......、これ(スライド)は「沸騰水型の原子炉」というやつですが、水を使う軽水炉には主に2つあります。

 こちらのタイプは「沸騰水型」と言いまして、ゼネラル・エレクトリック......、GEが作った原子炉でして、福島の第1号機がこの形です。東電の原子炉はほとんどこの形ですが......。まあ早い話、一言で言えばこれはやかんです。やかんでお湯を沸かす。(スライド図)左側の部分にやかんがあります。下から石油やなんかでお湯を沸かすっていうんではなくて、これは磯料理のように......。

 熱く焼けた石を中に入れると、いっぺんに沸騰するっていう料理がありますけれども、それと同じで、ものすごく熱く焼けた石が中にあります。それでお湯を沸かして出てきた蒸気を上から取っていって、その蒸気でタービンを回す。それによって発電をする。

 タービンの所で冷やされた水はまた元に戻って蒸気になるという、そういう流れでありまして、素粒子物理学とかですね、原子核物理学とかいろいろ難しいことは言いますが、結局のところは単なるやかん。ワット以来のアイデアとあまり変わってません。

 原発というのは、地震なんかがあると必ず止まるようにできています。この(スライド)、核分裂の仕組みあたりはちょっと省略させていただいて......。

 どうやって安全が保たれるか。3つの条件がありまして、1つは燃料を止める、核分裂を止めるということです。制御棒というのがありまして、原子炉の中で飛び交っている中性子を吸収してしまうという、そういう制御棒を......。

 この(沸騰水型)タイプの炉は下から上に入れることになっています。そうすると、中性子がそこで吸収されちゃうと、それ以上の連鎖反応は起こらない。あと、核燃料の中ではウランが崩壊する、その崩壊する熱だけが出るという仕組みです。

 今回の地震ではまず、どこの原発......、これ、東海岸沿いにいくつもありましたけれども、いずれも制御棒......で止めるということは完璧にできました。

 その次に、今度は残っている核燃料、それを循環しながら冷却水で冷やしていかなきゃいけない。それで大体......、通常の温度、数十度ぐらいまでの状態で維持するということができれば、(3条件のうち)2の段階まで進みます。

 さらに放射性物質というものを、格納容器というもの......。格納容器というのは、この(スライドの図)左側の白い外側の......。真ん中の円筒形のやつが圧力容器、その外側に格納容器というものがありますけれども、少なくともその中で閉じこめるという、その3つの要件が必要でした。

 ちなみに、柏崎刈羽の震災......、これはほとんど原発の真下でありましたけれども、この時はメディアが......、一部のメディアが大騒ぎした割にはすべて順調に行って、しかも今回の5倍ぐらいの加速度の揺れでしたけれども、それでも建物自身は問題なく耐えています。

 ただ、潤滑油が燃える、その変圧装置でもって燃えて黒い煙を出した。それに対して次々と情報を出して説明するというのは、リスクのコミュニケーションの失敗のために、みんなが心配して......。

 まあ、我々みんなが心配したのは、原発で火事だ、そして黒い煙が出ている。そうすると、その黒い煙からシュルシュルシュルっていって引火して原子炉がドカーンと爆発しちゃうんじゃないかというのが......。

 テレビの視聴者はほとんどが感じていたことでした。それに対してコミュニケーションできなかったということで混乱が起きたわけですけれども......。今回はその程度ではなかったです。
 

【目次】
 P2 → 前野一雄氏(読売新聞編集委員)①
 P3 → 同②
 P4 → 同③
 P5 → 穴澤鉄男氏(元河北新報記者)①
 P6 → 同②
 P7 → 小出重幸氏(読売新聞編集委員)①
 P8 → 同②
 P9 → 同③

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