文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

「大地震でジャーナリスト、医療者はどう動いたか―被災地からのレポート」 ②

■ 小出重幸氏(読売新聞編集委員)③
 

 水素爆発によって周辺が汚染されて、あとの作業が非常にやりにくくなったということと同時に、建物がかなり壊れてしまって、あとの給水系なんかをどういうふうにしていいか分からないというところが今の状況です。

 後で慌てて放水をしたり、それからいろんな方法で水を入れますけれども、今度は水を一方的に入れ続ければこれまた環境に出てきます。ということで今、空気中に放りだしている放射性物質もありますけれども、何よりも海域に、海の方に浸透している。しかもその濃度が非常に高いということが心配されています。

 高いやつを何とかタンクにいれたいということで、その前にタンクにあった低レベルの放射性物質......。この間、いきなり水を海の中に入れちゃいましたけれども、それはまあ、どちらかと言うと、津波の時に来て、中に溜まっていたような海水が大半というような、レベルがそれほど高くないものですけれども......。

 今あるものは......、この間3人、水の中にポンと足を浸けて、そのうち2人がやけどしちゃいましたけれども、その程度の非常にレベルの高いもので......。

 放射線の安全のための1つのガイドライン......。日本にはダブルスタンダードで、極めて安全性が高く見た方と、それから本当に被害が出るのはこの辺かなという2つあるガイドラインの中で、そろそろ......。

 3時間、4時間いるとリミットになるよというぐらいの高い放射線のものがありますし、その水がどこに出て行くかというのが一番の心配になっています。

 今の状態がどんななのか。これは誰もちゃんと把握していません。これ(スライド)は79年3月に起こったアメリカのスリーマイルアイランドの原発。それも後で余震をきちんと調べ直してみると、こういう状態になっていたことが分かりました。

 燃料棒はかなり上の方から壊れていって、それで真ん中の黄色い部分、ここに溶融したウランが塊になっていたと。さらに、その下にもこぼれ落ちたものがやはりドロドロになりますので、下に落ちて少し広がります。広がった時に表面積が増えて溶けた。そして固まったという、そういう形のようでした。

 これ(スライド)はおととい、「日本原子力学会」が「こうじゃないか」と想定した絵です。それは、壊れたことは壊れたけれども、結局、筒の中からバラバラに出たウランが下の方に細かい小さな塊で起こっているんじゃないか、それが水の底に沈んでいるんじゃないかというふうな1つの案でしたけれども......。

 「日本原子力技術協会」の方では、このスリーマイルやチェルノブイリを実際に見た研究者たちがいます。彼らはむしろ、真ん中で少し溶融しているのではないかという見方をしていますが......。この状態で止まっていまして、どういうふうにしたら分からないというような状況です。

 これ(スライド)が国際的な尺度で、高速増殖炉の「もんじゅ」で95年にナトリウムが漏れる事故がありましたけれども、これは異常な事象......。事象というのは、incidenseという英語を訳したものなんですが、これもやっぱりトラブルっていう日本語で書いた方がいいと思うんですが、異常な事象の中で1位です。

 99年の9月にJCOっていう......、東海村で臨海事故が起こりました。これが「4」。今回は、チェルノブイリと並ぶ深刻な事故です。放り出した放射性物質の量は決してまだここまで多くはないですけれども、これからの海への少しずつの汚染とか、そういうことを考えると十分に深刻な事故で、さらに......。

 これまでの事故はいずれも1つの現象でした。今回は3つの原子炉と4つの燃料プールのクライシスで、その大きさを最初から見積もれなかったというところが大きな原因です。

 そういうふうな原子炉に関しての情報というのを誰がどう伝えるべきなのか。この辺からが今度は情報の方のお話になりますけれども......。まあ、こういう絵だけ頭に入れておいてください。もし、後でディスカッションで必要なようでしたら、この辺のお話をしたいと思います。

 (発表の)時間としてはそろそろ......、よろしいですね?

[田辺功氏(医療ジャーナリスト、元朝日新聞編集委員)]
 はい。

[小出重幸氏(読売新聞編集委員)]
 とりあえず、ここで話を止めさせていただきます。(拍手)

[田辺功氏(医療ジャーナリスト、元朝日新聞編集委員)]
 はい、ありがとうございました。これで8人の方のレポート、第1部は終わらせていただきます。(以下略)
 
 
 
 (この記事へのコメントはこちら

 

【目次】
 P2 → 前野一雄氏(読売新聞編集委員)①
 P3 → 同②
 P4 → 同③
 P5 → 穴澤鉄男氏(元河北新報記者)①
 P6 → 同②
 P7 → 小出重幸氏(読売新聞編集委員)①
 P8 → 同②
 P9 → 同③

  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
loading ...
月別インデックス