「大地震でジャーナリスト、医療者はどう動いたか―被災地からのレポート」 ②
■ 小出重幸氏(読売新聞編集委員)②
起こった出来事を順番にお話しします。まず地震が来ました。今回は非常に大きかったので、原子力発電所に来るはずの電源が途絶えてしまった。(スライドの)バツが付いた所が落ちた所です。
電気屋さんが電気が来ないので非常に困った状態なんですけれども、ここで原子炉に電気が来ないことになると、制御棒を入れて止めたものの、あとの冷却ができない。
そうすると、そのときのために非常用の電源があります。そのディーゼル発電機というのが......。この(スライドの)絵......、模式図では上に描いてありますけれども、非常用ディーゼル発電機というのが第一原発の1号機ではタービン建屋の中にありました。その床に置いてあったんですが......。
これで、その状態で順調に冷えていました。ところが、1時間後、午後の3時半過ぎになって異変が起きます。それが......、これ(スライド)は運輸省......、いや国交省のヘリから撮った写真ですけれども、津波が押し寄せているのが分かると思います。
これ(スライド)は隣の第二原発ですけれども、第二原発は少し高い所にありましたけれども、それでもこういう状況でした。これ(スライド)は第一原発の......、津波が去った後にさらに浸水が分かった所ですが......。
左側のここら辺りに、1、2、3、4と並んでいます。それから、こちらの方に5、6とあります。1から4までの後ろには山がありましてですね、津波の波がこの山にぶつかって、はね返って、次の波と共にボンっと大きくなったという話がありますけれども......。だから実際には、15メーター以上になったかもしれません。
こちら(5、6号機)の方は後ろが割と抜けていたので、水がツーって抜けてまた戻ってきたということで、この中に13......だったかな、あった非常用の発電装置のうちで......。14だったかな......。13までは駄目になってしまった。ただ、こちらの6号機には1つだけ生き残っていたので、こちらの原子炉は冷却することができたという状況です。
9.0の震災で、外からの電力系統がすべて停電しちゃいました。非常用の発電機で冷却していましたけれども、津波の到来によってこれも失われる。でも、それでも原発には、冷却するという第3の方法がありました。
それはバッテリーの電源で......。これ(沸騰水型原子炉の図)で見ると、左側に「冷やす」と書いてますけれども、そちらの方で、圧力容器の中にある水、それを循環させるポンプが付いています。このバッテリーが大体8時間ぐらいでなくなります。
この電池がなくなる時には本当のクライシスが来る時で......。これ(スライド)が電池もなくなって冷却系がすべて止まったという状況です。この時に、米軍、アメリカ政府は......。
冷却系がなくなると困るのは......。右上に燃料プールというのがあります。ここには、定期点検中の原発は燃料を全部そこのプールの中に入れて保管する。
それから、そうではなくても使用済みの核燃料をそこに入れて保管しておきます。それも......、水がジャブジャブでなくてもいいんですけれども、一定の量だけ、少しずつ循環しながら冷やせば何の問題もないんですが、その水の循環もなくなる。
ということをアメリカは一番最初に心配しまして、すぐ官邸に......、まず非常用の電源、ディーゼルのような発電車を供給しようかという提案をしますけれども......。
これがまた日本の......、決して官邸だけじゃないんでしょうけど、他の組織に入ってきてもらいたくないという......、排他的な心理が働いたのか、まずそれを断っています。
結局、こういう状態になって、その結果、何が起こるかと言いますと、この燃料棒......。燃料棒は高温になると、それを包んでいるポンプが損傷します。金属が損傷すると......、その金属が周辺の酸素を取って酸化しますと、水の中で残った水素、それが液体になって外に出てきます。
水素は軽いので、この圧力容器、それから原子炉の格納容器を越えて、一番外側の白い所......、原子炉建屋と言いますが、そこの上の方に溜まります。それが何かのスパークでもって爆発します。それが水素爆発というやつで、第1号機......。
続いてこれが......、3日後だと思いますけれども、第3号機も水素爆発します。水素爆発というのは......、恐ろしいのは、水蒸気爆発なんかと違って爆音速度と言いますか、破壊の衝撃があまりに大きいので、みんなそれを一番恐れるんですが......。
それによって、まず大量に放射性物質をまき散らしました。それから、周辺の......もおかしくしてしまったということで......。これ(スライド)左に燃料棒の構造が書いてありますが、底の部分で酸化が起こってブクブク泡が出て上に上がっていくという、そういう図式だったろうということなんです。
【目次】
P2 → 前野一雄氏(読売新聞編集委員)①
P3 → 同②
P4 → 同③
P5 → 穴澤鉄男氏(元河北新報記者)①
P6 → 同②
P7 → 小出重幸氏(読売新聞編集委員)①
P8 → 同②
P9 → 同③