中医協委員、大阪で現場医師らと診療報酬を議論
③7:1など看護師問題、地域格差「地域への財源と権限の委譲も一つの方法」
司会
次の質問に移らせていただきます。永生病院の安藤高朗先生からご質問頂きたいと思います。7:1看護、72時間夜間勤務等の看護問題と地域格差についてでございます。安藤先生はご存じのように、前回(2010年夏の参院選)惜しくも次々点という形で民主党、日医、病院団体から推薦されて立候補された先生です。地域医療を非常に頑張っておられる先生です。先生ご質問の方をどうぞ。
安藤
どうも、今ご紹介に預かりました、いつもお騒がせしております安藤でございます。どうもすみません。私の質問ですけど、7:1看護、72時間*。この7:1が入って非常に看護師さんの偏在が進んだと。またこの72時間の夜勤問題が入って非常に現場が混乱している、もっともっと夜勤をしたいのに、規則を守って72時間以内にしないといけないということが起こっております。また邉見先生がお話しされたようにこれによって、救急医療告示機関が減少してしまう事実がございます。にもかかわらず、今度またこれをさらに厳しくして、5:1あるいは64時間の夜勤にしていくという話もあります。lこれはぜひ改めて頂いて、もっと患者さんの重症度とか病態に合わせた評価をしていくとか、そういうところが大事じゃないかと思っております。
*7対1入院基本料・・・入院患者7人に対して看護職員1人がつく病棟(24時間平均)に患者が入院した場合、病院側の報酬は一日につき1万5550円。最も高い入院基本料で、2006年度の診療報酬改定で新設された。それまでは15人、13人、10人の3区分だった。これにより看護師が待遇の良い都市部の病院などに集中したため、地域医療の崩壊を加速させたと言われている。
*72時間夜間勤務・・・看護師の1か月間の1人当たり平均夜勤時間数を72時間以下にしなければ入院基本料が減算される。
*東京から駆け付けた安藤氏。しかし、心血を注いで7:1を実現させた日看協がこれを聞いたら激怒するのではないだろうか。
もう一つは地域格差の問題ですが、これは昨年梅村先生のご指導の下、1000か所以上の医療機関を回らせていただきましたけど、本当にこの日本の国というのは、地域格差が非常にございます。静岡とか茨城とか東北の一部の地域とかは本当に看護師さんが少ない。あるいは医師が少ない中でも非常に救急医療をがんばってらしたりとかしますが、その地域には将来的にも絶対これ以上は看護師さんが集まらないなというエリアもございます。そうであったらもっとその色々な職種の人たちに協力していただいて、トータルマンパワーで評価して差し上げるようなことがあってもいいと思いますし、また鈴木先生のスライドにもありましたけど、東京とか大阪の大都市では土地がない、土地が高くて病院の建て替えができなくてそのままフェイドアウトしてしまうようなところもありますし、診療所においてもほとんどビル診になってしまって、在宅が進まないという事実がございます。そのことも含めてこの質問に関して宜しくお願いいたします。
司会
ありがとうございます。この質問に関しては西澤先生の方からよろしくお願いいたします。
西澤
今二つの質問があったと思います。答えになるというより、私が愚痴を言っているような気がしますが、本当に7:1が入った時、私は北海道ですが、東大病院とかそういうところから北海道まで看護師さんを募集に来たんです。それでどんどん札幌辺りの学校から抜かれて行ったんですね。すると今度は札幌に看護師がいなくなるということで本当に僻地の方から来た。それで僻地に看護師さんがいなくなったと。それまで10:1でやっていたところが15:1になったと。しかも看護婦さんが少ないから72時間守れなくなって入院基本料が守れなくなって、一番安い5百何十点の入院基本料に落ちたということでさんざんな目にあいました。私は当時北海道のことばっかり言ってたから、「お前は全日本病院協会の会長なのになんで北海道のことばかり言うんだ」と言われましたけど、それほど、私がそう言わざるを得ないほど悲惨な目に遭いました。そういうことではこの7:1と72時間には非常に恨みと言ったら怒られるので(本人と会場笑)、強い思い入れがございます。中医協でもなんとかこの72時間、労基法とこの72時間というのはダブルスタンダードですねと。労基法は私たちも守らないといけないものですが、よりきついものをペナルティみたいに入れるのはおかしいということで、これは次回は何とかもうちょっとしたいなと思っています。
5:1とか64時間とか確かに聞こえてくるんですけど、どこかの看護協会で私たちはそういう主張は致しておりませんと言うんですね。信じていいのか私の人生は女性に騙されっぱなしですからあまり信用できないなと思っております(本人と会場笑)。まあこれは愚痴みたいな話ですけど、いまのところは絶対信用して、したふりしてですか(笑)、そういうことにならないようにしていきたい。
*次期改定で日看協と全面対決する気合が見られる。
それから地域格差、これは東京や大阪みたいな都会は、土地が高く人件費が高くて困っている、地方に行くと人がいない、患者が少ないことで困っている。この地域格差と言いましょうか、地域をどのように診療報酬で評価するのは非常に難しいと思っています。中では離島加算のようなものがあります。でも全国一律に決めるのは難しいと思っております。だからしないじゃなくて何とかきめ細かいやり方を一つでも二つでもやって何とか積み重ねていきたいと思っております。ただこれはあくまで個人的な考えですけど、将来的にはもっと地方に権限を与えていいんじゃないかと。たとえばオーストラリアは日本と同じような皆保険ですが、保険料を全部連邦政府が集めてそれ州にまとめてお金を渡します。そこに州が州予算で付けてそれぞれで運営しているということですね。例えばDRG(Diagnosis Related Group(疾患別関連群);国際疾病分類(ICD-9)に掲載された1万以上ある病名を、患者への治療の内容によって分類する手法)がオーストラリアに入ったと言っても、全体で入ったんじゃなくてビクトリア州から入ったと。週ごとに違うという面もあります。それがいいか悪いかは別にして、そういうことも今後検討していいんじゃないかと。すべて何でも中央で一律でやるよりは、やはり地方にある程度の財源と権限を与えるのも一つの方法じゃないかとそういうふうに思ってます。
*地域の特性に配慮した報酬改定を重視している厚労省との連携はバッチリということだろうか。
司会
ありがとうございます。スタッフの問題等含めてDPCでは今度は医師密度とかややこしい言葉がまた出てきているかと思います。これは地域によって大問題だと思います。日本全体でも大問題かと思います。安藤先生にはお答えになったかどうか分からないですが、先生いかがでしょうか。
安藤
どうもありがとうございました。ぜひとも全国一律の基準ではなくて、各エリアに合ったものをご提案していただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
*安藤氏は西澤氏が会長を務める全日本病院協会の副会長。看護基準に関する苦悩と厚労省へのアピール、二人のやり取りは筋書き通りかもしれない。