中医協委員、大阪で現場医師らと診療報酬を議論
⑥在宅医療「チーム体制をどうつくるか」
司会
次に参ります。在宅医療についてという非常に漠然とした大きな問題ですけども、その切り口の一つとして、中尾内科クリニックの中尾治義先生、ご質問よろしくお願いいたします。
中尾
堺市で内科と小児科をやっております、中尾と申します。私自身はごく普通の診療所でありまして、在宅支援診療所でもなんでもないんです。普段診ている患者さんが運動器の故障やあるいは加齢で診療所まで来れなくなった時に「来てくれ」という依頼があれば訪問診療をしているという、昔ながらのオーソドックスな診療所です。その在宅に関してですね、私があまり言える立場ではないと思うのですが、今の在宅医療というのが医療費を抑制するために入院医療から在宅医療へ移動させようということで何かと点数が付けられてきたような気がするんです。そしてどんどん昨今は肥大してきてですね、長尾(和宏)先生のようなスーパーマンがいるところはいいんですけど、普通の診療所は自分のところでは無理なんじゃないかなという気持ちがどうも強くなってきているように思います。在宅支援診療所の許可を取っている診療所もたくさんあるんですが、実際にやっているところは非常に少ないような気がします。このまま在宅医療がどんどん肥大化してきて病院の病室ごと家に持ってくるような高機能在宅医療に向かってきていると思いますので、やれるところがどんどん限られてきてですね、診療所間の格差というとおかしいですが、いびつな診療体系ができるということに漠然とした不安を持っているわけです。今後在宅医療がどうなるのかということを先生方からお聞きしたいと思います。
司会
ありがとうございます。介護も視野に入れて、往診から在宅に変わってきたというふうな内容ですが、安達先生いかがですか。
安達
鈴木先生にも後で追加をお願いしたいと思うのですが、開業医の立場で申し上げると、先生は整形外科とおっしゃいましたか?
中尾
内科です。
安達 内科でいらっしゃるんですか、すみません。そんなに腰を引かなくてもいい在宅医療がいっぱいあるわけです。高度なものはごくわずかです。これはやっぱり開業する時にみなさん地域に案内状を仲間にもお出しになる、みんな地域医療に貢献し、と書くんですよね、本当にそう思っているかどうかは別として(会場笑)、ということは自分の患者さんが在宅での診療が必要になった分ぐらいは自分で診ませんか、というのは非常にプリミティブな私の提案です。それがやれないはずは普通の条件の開業医ならないでしょう、他にいろんな条件を持っておられる方、いない方があるでしょうけども、というふうには思います。
そういう面から言うと、看取りにしても前回の数か月前で厚労省のデータでも各都道府県には病院死が当然多いんですけど、一定の在宅死がある。在宅死の中のおよそ4分の1しか在宅支援診療所が診ていないというのが実態なんです。4分の3はかかりつけ医が診ているわけですよね、そういうことになるとまず点数表から言うと、あるいは在宅の広がりから言っても、在宅支援診療所単独でやることには明らかに限界があって、診療所も含めた全体の中での在宅医療サポートということを考えなければならないとすると、点数格差はあまりにも大きいですね、ということはまず診療報酬の問題としては改善しなければならないだろうと。
もう一点は先ほどの高度化した場合です。この時は一人では無理なんですよ。チームをどう考えるかということだと思います。チームを組んだ時の問題は多々あります。これはいろんな方法があると、簡単に言えば3人が組んだと、一人が代表で診療報酬をもらう、3人に分ける、だけど所得税はその一人だけにかかる、これをどうするんですかという問題です。例えば3人でチームを組んだら、4か月ずつ代表を交代したらどうですかというふうな解決法はあるとは思うんですが、今からの在宅医療というのはやはりチームを考えなければいけない。これが2番目の問題だと思います。
3番目の問題は後方ベッドです。これがないと在宅医療を担当する医師は在宅医療を十分にサポートすることはできません。急性転化をした場合、在宅では完全に限界がある場合、速やかに入院できる後方ベッドがあるかということです。この体制を診療報酬で作るのかどうか、これはまた議論だと思います。京都府はすでに包括支援在宅医療センターというのを京都府医師会が府に働きかけて支援本部を作らせて、本部は京都府医師会館の7階にあります。その中で一番最初にスタートしようとしているのが、後方ベッドの構築です。安心医療提供体制システムということになっています。そこで皆さんに働きかけてできるだけ多くの方に手を挙げて頂いて、その後方の入院をスムーズにする、同時に退院する時もケアプランとかを作りながらスムーズに在宅移行するようにして、そういう患者さんが必要以上に病院に長くとどまることがないようにするというシステムを今はじめております。京都府は府が独自で補助金を出すということです。自治体においてもそういう活動をしなければならないだろうというふうに思いますので、在宅をそんなに怖がる必要もないケースも多々あるし、それについては外来診察以外の時間だからやりたくないなんてことは若い方々にもぜひ言わないでほしい。それだったら地域医療で開業したことは元々間違いかもしれませんよ、ということも含めて我々は開業医教育をし直さなければいけないという側面もあるかもしれません。そんなふうに今感じております。
*安達氏の得意分野。綺麗に整理もされている。
司会
ありがとうございます。鈴木先生、よろしくお願いいたします。
鈴木
ちょっと補足させて頂きますけど、先ほど私の話の中でも上げさせていただきましたが、基本はやっぱりかかりつけ医の方が最後まで診るのが一番患者さんにとっても幸せだと思うんですよ。それがなんとか無理のない形でできないかということで、やはりあの若いうちは色々言われてもいつでも(往診に)行けても、だんだんと難しくなってくるのは当然だと思うんです。それが今の制度だと在宅支援診療所になって24時間365日対応してくださいと。これは私は続かないと思うんですよ。できる範囲でその先生は昼間だけはいますから夜間はお願いしますと、土日だけは休みたいと、そういう安達先生がおっしゃったように一つはチームで在宅医療をする、その中心に在宅支援診療所や在宅医療支援病院がなるのかといったところ。それからチームを組んでそれぞれのかかりつけの先生ができる範囲で自分の患者さんを診れるようチームを組んで見ていけるような仕組みができないかどうかというところを、在宅医療連絡協議会の在宅専門の診療所の連絡協議会の事務局長さんも入っておられて、その方がおっしゃったのですが、在宅専門の診療所、これは人口20万人以上いないと成り立たないそうなんですがそういう方が、ずっとかかりつけの先生が診てこられた方がターミナルが近づいてきた時にどんどん(自分の患者として)取っていく、まあ言葉は悪いんですが、やっぱりそういうのは正常じゃないと言うんですよ。そういう方も含めた形で地域で、そういう地域に密着した病院、支援病院とか診療所があると思うんですが、ベッドを活用した形でですね、後方ベッドですね、日本型のシステムと私が言っているのはそういう意味でして、中心はかかりつけ医の先生方がですね、そういうものが何かできないかと話し合いをしておりますので、何か提言ができればいいかなと思っております。
*早口過ぎて聞き取りづらい。もったいない。
司会
ありがとうございます。次の有床診療所の問題とも関連しますが、嘉山先生。
嘉山
その通りです。これはエビデンスとしての数字を示します。あと10年経つと、今の1.7倍が亡くなります。つまり死亡数が今は100万ですが170万ぐらいになりますから、そうするとですね、病院で看取るなんてことはとてもできなくなります。有床診療所、あるいは在宅で看取らないと、どこで看取ったらいいかというのは大問題になると思いますね。例えば東京ですとがん患者があるマンションに行きますと半分ぐらいだと。そこでは在宅で診療所の先生ががん専門で治療しています。いやおうなしにこういう時代が迫っていますから、この辺の制度設計はこれから新たに適切なものに組み直していかないといけないと私は思っています。
司会
ありがとうございます。一つはあまり怖がらなくていいということと、制度設計がこれからますます必要になるということです。次の有床診療所にも関係しますので、中尾先生よろしいですか。
中尾
ありがとうございます。