中医協委員、大阪で現場医師らと診療報酬を議論
⑤慢性期入院医療「赤字の診療行為はあってはならない」
司会
では次の質問に移りたいと思います。久米田外科整形外科病院の柴田和也先生からご質問でございます。慢性期入院医療についてということです。柴田先生よろしくお願いいたします。
柴田
よろしくお願いいたします。地元大阪で療養病棟を営んでおります、柴田と申します。発言の機会を与えて頂きありがとうございます。本当を言いますと、中医協の先生が来られるということで怖くて怖くて仕方がなかったんですが(笑)、先生方のご意見を聞き、お人柄に触れ、来てよかったなと、先生方には感謝しております。
療養病棟におきまして医療区分が必ず問題になるんですけどその採算性からこのままでやはり療養病棟区分1、2の問題、この入院基本料を上げて頂かないとどうしても経営がひっ迫になるということが一つございます。そして内藤先生が触れられたんですが、他科受診の問題につきまして、やはり私どもの方から言わせていただきますと、やはり入院患者さんの健康管理を見て他科受診が必要な場合がございます。その時に入院基本料が下げられるということがございます。それと他科受診された場合その医療機関での内服の投与が一日しか認められておりません。ですから後の継続投与が困難な場合が多いということです。極端な例が最近ありまして。慢性腎不全の患者様で透析には至らず、高カリウム血症の管理のため月に3000円程度の慢性じん不全の投与剤を受けておられる。月にして10万ですね。こういう患者さんがどうしても受けることができないです。ですからまず医療区分1、2の問題、入院中の他科受診の問題、先ほど西澤先生に懇切丁寧にご説明頂いたのですが、お願いしたく発言させていただきました。よろしくお願いいたします。
*この医療区分1、2の当たりの報酬が低く、経営が成り立たないという話
司会
西澤先生には先ほどお話しいただいたので、鈴木先生にお願いしたいと思います。
鈴木
慢性期入院医療の件ですが、今後の超高齢社会においては、急性期の大病院と軽装備の総合的なかかりつけ医だけでは非常に不十分であることは明らかになってきておりますから、亜急性期、慢性期医療、そういったものはきちんと充実しなければいけないと考えております。その中で具体的に医療区分1というのは経営が難しい手数にされてしまっているわけですが、これは改善をもちろんしなければいけないということですが、その時に注意しなければいけないことは、じゃあ医療区分1を上げますけど、そのために2と3を下げるということでしたいとなりますと、みなさん重症の方を受け入れることでカバーされているところもありますので、そうなったらあまり意味がないので注意してきちっと主張していかなければいけないという風に考えております。医療療養病床、介護療養病床、これはほとんど以前は差がないと言われましたけど、今は機能分化が進んでおりますし、これは一般病棟の13:1、15:1の問題もありましてですね、90日以上の入院の方をどうするかという問題もありますが、これは地域医療が13:1、15:1の病院によって地域の急性期医療が維持されているという状況もございますので、そういった医療機関が急性期医療の継続が困難になることだけは避けたいということできちっと働きかけていきたいというと思っております。
入院中の他科受診ですね、これは本当に前回の改定でですね、DPCのところに規定がなかったということで、そこを改善するということでスタートしてほとんど議論のないまま現在のような形になってしまったのですが、一部は途中で改善していただきましたが、これは大きな課題でございますので、次期改定に向けて今仰った透析の問題とかこれは明らかにおかしいことですね。こういったところとかをですね、今回の大震災でですね、現場から上がってきたご意見というのがですね、多分厚労省はこれは本当に大変なところなんだろうなという風に認識されたと思うので、もっといろいろ言っておけばよかったと今になって思いますけど、あの時に言っていたようなものは多分改定の意見としても影響されていくのかなという気がいたしますが、今ご指摘のあったような透析の部分とかですね、これは絶対次の改定に向けて見直していかなければならないということで、私どもとしましても強く働き掛けていきたいと思います。
司会
西澤先生、追加をお願いいたします。
西澤
薬の件なんですけども、これは包括病床、療養病床、あるいはDPC(算定病棟)、老健もそうなんですけども、包括の点数の中に薬が入っているということなので一日分しかないんです。後は当然飲みなさいということです。もう一つのルールとしては高額な医薬品については出来高で認めるというものがあって、DPCでもそうですし、ありますので、どうしても必要なそういうものに関しては(包括から)外すということをやればいいんじゃないかなと思います。どうしても厚労省的には性悪説で考えますので、薬を他に行った時に例えば一括で出せればですね、自分のところで本来であれば包括で診るものを、どこかを受診させて一月分もらうようなことをするんじゃないかと、そのような考えに基づいてますので、その辺りは全部他の科に行った時にすべてを、というようなことはなかなか難しいと思っております。
安達
一言だけ申し上げると、嘉山先生がおっしゃった、やったことはちゃんと評価して支払ってくださいと、このことに尽きると思います。例えば療養病床の医療区分1要介護3というマトリックスの部分は、確実に赤字ですよね。これは薬剤費も含めて、今西澤先生が言われました。これを作った時、麦谷課長(当時改定を担当した麦谷眞里厚生労働省保険局医療課長)はその後にインタビューに答えて「そうだよ。赤字になるように作りました」とおっしゃいました(会場ざわめく。「なんだそれ」などの声)。どういうことなんですかと、やるなということなんですかと。だけど社会的ニーズがあるんだからやらざるを得ない。先日DPCの入院医療を全部見たら、無視できないほど各診療科にわたって採算割れの点数、45度のラインより下回るものがたくさん出てくる。これもやっぱり問題で、やったことはやっただけちゃんと払ってください、つまり今の報酬だとマイナスの部分はあるんだけどプラスの部分もあって、全体に見てプラスだからいいでしょうと。ということはプラスの部分は余分にもらい過ぎてるんですかと。そういう話ですから、基本的に我々のスタンスとしては、個々の物について公定価格で決める以上、極端に言えば保険診療として認めたのならば1点たりとも、赤字の診療行為はあってはならない、それが基本だと思っております。
*実はここに、来年の日本医師会会長選挙を控えた、日本医師会vs京都府医師会の構図があるという見方もできる。昨年の会長選では、当時の茨城県医師会の原中勝征会長が僅差で京都府医師会の森洋一会長を破って当選した。しかし原中会長就任後、日医は活動内容などについて会員内外からの評判があまり芳しくなく、森氏を待望する声は強まりつつある。こうした状況で迎える来年の会長選で、カギを握るのが大阪勢だとされる。大阪勢がどちらに付くのか、それとも別の候補が擁立されるのかなど、大阪の動きに注目が集まっている。
その見方からすると、大阪府医師会の伯井会長が来賓あいさつをしたこのフォーラムは大阪の医師らに京都府勢、原中勢がそれぞれをアピールできる格好のチャンスの場でもあるわけだ。森氏側近の安達氏vs原中会長お抱えの鈴木氏(茨城県医師会)。特に在宅医療や有床診療所という開業医に関する話題でどれだけ会場の医師から高評価を得られるかが重要になる。
しかも厚生労働部門会議で副座長を務める梅村議員自らが主催する場であることは、両者にとって大きな意味を持つ。現場の医師に中医協を知ってもらうための場のみならず、会長選をにらんだ水面下での駆け引きが行われている場とも見える。
そのように見ていると、安達氏は全体を通して発言量が多く、特にこの「麦谷発言」など会場への惜しみないアピールだったようにも感じられる。一方の鈴木氏は中医協記者の間でも発言の聞き取りづらさで有名だ。今回も発言の機会は多いものの、その面で損をしているようにも感じられた。
司会
ありがとうございます。力強いお言葉を頂いたと思っております。柴田先生、いかがでしょうか。
柴田
先生方、ありがとうございます。デモでもなんでもいたしますので、よろしくお願いいたします(会場笑)。