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役所を怖がりつつ、すり寄る 医療業界は自立していない

梅村聡のあの人に会いたい 小松秀樹・前亀田総合病院副院長(下)

 患者の自律をサポートするには何が必要なのか、元参院議員・元厚生労働大臣政務官の梅村聡医師が、気になる人々を訪ねます。
梅村 小松先生世代とかお立場の方が、MRICとかネットにしょっちゅう、熱心に記事を書いてるというのは、先生以外で見たことないですね。

小松 皆、怖がってますよ。

梅村 怖いんですか。

小松 私の今の状況を見たら、おとなしくしておこうと思いますよ。

梅村 僕も立場上、色々な医療関係者とお付き合いがあるんですけど、僕の目の前で飯を食いながら言っている言葉と、実際に壇上に立った時の言葉が全然違う方おられますよ。なんでかな、と思ってましたけど、あれは役所が怖いんですね。

小松 個別指導で自殺した人、いっぱいいますよね。

梅村 そうそう。僕も一昨年から新しい診療所をやってて、昨年の5月に、半年目の全員受ける個別指導があったんです。それで院長が行くって言うから、じゃあ僕も理事長だからということで付いて行って。僕も院長の後ろで座ってたんです。内容的にははっきり言って、あんまり意味のない指導だと感じましたが、でもあの環境でネチネチやられたら精神的にはかなり参ってしまうかもしれませんね。。

小松 後ろ盾のない人は無茶苦茶やられるんです。

梅村 そうらしいです。帰ってきて色々な先生に、個別指導って色々なことがあるんだと思うけれど、あれがなぜ怖いんですか、と言ったら、それは違うんだ、と。あれにどんだけ皆ビビってるか、と言うんです。だからこの国は、南町奉行所と余り変わらないんやな、と。

小松 (医系技官は)法律を知らないから、無茶苦茶を言って追い詰める。だけどそれに逆らえないようになってるんです。ずるくて、自分の責任にならないように、診療報酬の自主返還を求めます。いくらとは言わない。追い詰められた側はどうしたらいいのか分からない。文句を言われたままに返還すると即倒産です。日本医師会だって、抑えつけられています。事務局長は元医系技官で、意思決定に関わる理事です。病院の団体なんかにも全部天下りしています。医師の側が全然自立できていない。そもそも、医師会っていうのは何のためにあるかっていうと自律のための団体ですよね。世界医師会がなぜ出来たかというと、あれはナチの反省ですよ。

梅村 要するに権力者が医療を支配して人体実験を含めてやったわけですよね。そういうことがないように、プロフェッショナル集団としては、自分たちが権力に不当に介入されないような自律組織を作ろう、と。

小松 そうそう。ドイツの医師会なんか、まとまってると一遍に支配されるからって、州ごとに分かれてるんです。

梅村 日本ではドイツ医師会と違って、権力の不当介入を防ごうじゃないか、やっぱりユーザーのため、地域住民のために、プロとして、そっち側で守ろうじゃないかという組織というのは、あんまりないですよね。で、どちらかというと権力側と仲良くして、でしょう。事故調の話だって、病床規制の話だって、今回の専門医制度だってそうですよね。これどないしたらええと思います?

小松 医系技官は失敗するたびに、強制力を強めようとする。無理に無理を重ねてます。このままだと、どん詰まりまで行っちゃうんじゃないですか。水面下で、亀田言論弾圧事件のようなひどい事件が他でも起きてると思いますよ。紛争はこれから頻発するでしょうね。解決は、行き着く所まで行ってからですね。
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