味噌汁は高血圧に悪いの? ~健康情報しらべ隊②
文・堀米香奈子 本誌専任編集委員。米ミシガン大学大学院環境学修士
「減塩しても血圧が下がらない人もいる」と言いっ放しで終わってしまった前回。「高血圧の予防や改善のため」と減塩に励んでいる人にとっては、ショッキングな指摘だったでしょうか。ただ、この原理を正しく理解すると、明日からの食生活が、グっと豊かになるかもしれません。
食塩感受性
これまでの研究で、体質的に、食塩摂取で血圧が上がりやすい人(食塩感受性)と、上がりにくい人(食塩非感受性)のいることが分かっています。日本人では、原因不明の高血圧のおよそ3~4割が前者と見られています。
塩分を多く摂ると、交感神経が刺激されます。その時、食塩感受性の高い人では遺伝子発現に変化が起き、ナトリウム(食塩の主成分)排出が抑制されてしまいます。結果、水分も引き止められて血液量が増え、血圧は上昇する、こと前回説明しました。
つまり、食塩感受性の高血圧は、遺伝的な素因をベースに「食塩の過剰摂取」という環境因子の影響が加わって起きる、というわけです。高齢者や女性、肥満者、慢性腎臓病(CKD)患者などで、食塩感受性は高まっていることが知られています。
食塩感受性の高血圧患者は、通常なら血圧が下がるはずの夜間~就寝中~早朝も下がらない傾向にあり、心血管疾患を起こしやすいことが分かっています。日中に食事から摂ったナトリウムが、きちんと排泄されずに体に溜まってしまうためです。
対策としては、積極的に減塩を行い、さらに水分と塩分を尿として追い出す作用のある利尿薬を使って、血圧降下を図るのが有効です。
実は食塩感受性の高い人は、正常血圧の段階で既に心血管疾患のリスクが高くなっており、リスクをさらに上げることのないよう、平素から減塩に努めるべきと考えられます。
残る6~7割の原因不明の高血圧は、食塩非感受性ということになります。
この高血圧をひき起こしているのは、血管を収縮させ、それによって血圧を上昇させる作用を持つタンパク質です。加齢と共に血管の細胞に変化が生じ、このタンパク質の影響を受けやすくなります。
高血圧と食塩過剰との間に直接の関係がないので、減塩をしても血圧を下げる効果を得られにくい、ということになります。
でも見分けが困難