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ニュース〜医療の今がわかる

後期研修班会議5

山田
「後期研修のプログラムを作る中で議論しているが、まだしっかりとしたものは出せていない。ただグローバルスタンダードの中では、ある程度ジェネラルプラクティスという分野は確立されているので、そういったものに近いだろう」

土屋
「なぜ、定義づけを訊くかというと、前回もそうだったのだが、人によって抱くイメージが異なるので、ハッキリさせられればと思った」

川越
「この種の議論でいつも問題になるのが定義だ。具体的に目標とする医師像があれば。というのは前2人のお話を聴いていたら、なんとなく自治医大が育てて地域医療を担っている医師に相当するのかなという気がして、だとすると働く場所が限られるんでないかと心配だ。併せて、特性を生かした働き場所がどこになるのかも教えてほしい。それからスペシャリストがこれだけ多い中でジェネラリストが診ると、どうしても見落としの可能性があると思う。医療訴訟になる可能性もあると思うのだが、その辺りへの学会としての見解や対策があれば、お聞かせいただきたい」

山田
「家庭医の働く場所として分かりやすいのは僻地や離島に1人だけというので、それだと英国のGPやっている人と似ることになる。しかし理念としては、そこは意識していない。1人の患者、1つの家族をずっと診続けるというものだ。たしかに制度として守られないと、専門医の大勢いる都市部では存在しづらいかなという印象はある。見落としが重大な紛争になるのは、見ず知らずの人で結果が重大だった場合、その時の説明や対応がどうだったのかということが大きいと思う。お互いの理解とコミュニケーションがある場合には事故が訴訟にまで発展するということはそんなにないのでないか。そこを埋めるのは、医師の誠意とコミュニケーション。お互いにバックグラウンドが分かっていると、信頼関係も築きやすい。不信感の中で訴訟になっている面が大きいと思うので、まず信頼回復を図るしかないのでないか」

前沢
「私も自治医大に14年勤めていた。が、先ほど説明したように、学会を支えてきたのは都会の勉強熱心な開業医。その意味では、どこでもやれると思っている。都会であれば、僻地よりは責任の範囲が少し狭くなるだろうが、その分、専門医を上手にコーディネートする必要がある。訴訟に関しては、我々の分野は米国でも訴訟が少ない。それはコミュニケーションの賜物だろう。1人しかいない場所へ行く場合には、新患を軽く見がちなので気を使って戒めていた。かなり意識的な努力をしないと大変なことになりかねない」

小泉
「私はもともと外科医で、生まれは東京の下町の開業医の息子なので、いろいろな角度から見ている。理想像はとりあえずあるけれど、それが余りにも立派すぎると、そんなの日本ではできっこないという話になりかねない。現実には、医師会の会員にもかなり熱心に勉強している方々がいるので、そういう方のやっている医療がモデルになるのでないか。問題は、そういう方々がvisibleでないことだ。マスコミなんかでは、医師会会員というとベンツを乗り回して週末にはゴルフに行って威張っているというイメージが強いのだが、本当は一生懸命やっている方は相当数いる。大学でも、地域のそういう先生を発掘して、学生が実習や研修に行けるようにしている」

土屋
「たしかに医師会の中身は2種類ある。昼間に医師会の活動をしていて政治が好きな人と、夜に医師会の勉強会をしている人と。東京だと毎日のように何か医師会の勉強会がある。でも、そういうのは表に出ずに、声の大きい昼間の医師会の人ばかりマスコミに出てる。小泉先生のスライドの中で、ジェネラリストの活躍の場が、クリニックだけでなく、実は中途半端な規模の地域の病院でクリニックと病院の二極分化しているわけではないという指摘があったが、その意味では厚生労働省も二極分化していることを前提に政策をたくさん打っている」

小泉
「最初から、中小の病院は排除して大病院と診療所のどちらかしかないようにするんだ、そういう政策目標があって行政を行っているなら、それも一つの考え方だと思う。たしかに諸外国はそうなっていて、中途半端なのがあるのは日本。しかし、問題なのは日本の現状のアセスメントがなくて政策が行われていること。現場がどうなっているのかのデータがない。だから、どうしても概念的な話ばかりになる。たしかに、中小病院にはマイナス面がある。しかし地域に密着した本当の医療がやれていた面もある。そこに、きちんと光を当てて評価したうえで政策を進めてほしい」

土屋
「銚子にしても夕張にしても、機能は外来中心で、クリニックの方が大きかった。それなのに何床という入院ベースの話をしてたから、話がおかしくなった。実は地域の病院の多くもクリニックの側で解釈しないといかんのかもと思った。使えるデータがないというのは、本当にその通り。家庭医の数をどうやって数えたらいいのか」

川越
「すごく大事だと思って聴いた。もう一つ山田先生の後ろから4枚目のスライドもとても大事だと思う。皆が皆スーパーローテートするというのは見直すべきでないか。こちらからの意見として、あちらの検討会にお伝えいただければ」

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