後期研修班会議5
「将来は新卒の人の5割をめざしてほしい。世界でそれなりに資源をかけて質のよい医療をしている所では、概ね割合は1対1だ。途中段階では新卒の2~3割と途中から入る人が3~4割という感じだろうか」
小泉
「医師需給に関する研究班でも検討されていて、そこでの結論もたしか45%くらいだった。5割近くというのがグローバルスタンダードでないか」
江口
「コメントを一つ。家庭医のコミュニケーション能力が重要という話だったけれど、他の医者も備えていなければならないこと、全部の医師に習得してほしい。がんの地域での在宅緩和ケアが大事というのは、全くその通り。で、小泉先生に質問。病院での総合診療医の定義、カリキュラム、役割を教えてほしい。中小病院であれば理解できるのだが、大学病院の場合、主任教授とか診療科長とか中堅の医師にはそういう総合診療をできるんだという声を多くの大学で聞く。そういうのはスペシャリスト養成のためのカリキュラムの一つと割り切っていいのか。日本だと専門教育を受けた人はいなくて、各科で診療能力が高いだろうと思われている人が大抵は総合診療に当たっている。それが続くのか」
小泉
「日本の伝統的なナンバー内科で育てられた人はそういうことになるのだろう。しかし現実には、臓器に特化したもので育てられる人がどんどん多くなっている中で、総合診療医がいると重宝されて、たとえば肺炎や脳卒中なんかある程度まで任せるというのが出てくる。大学病院や大病院で、入院患者のケアをきちんとできるのであれば、こういう人に任せようということで現場では定着している」
渡辺
「日本型の総合医を考える時にキーワードが2つあると思う。一つは高齢者をどう支えるかということ、もう一つは中小病院が日本の地域を支えてきて大学の臓器別の科から派遣された医師に頼ってきたのがどんどん引き揚げられて困っている。そのまま潰れるところと山田先生が手を貸して立ち直るところとに分かれて、それを見ていると中小病院では一握りの専門医と多数の総合医という組合せにならざるを得ないのだろう。100床や200床だと内科も総合的にならざるを得ないし、内科の医師が小児科を診ないということになると、小児科はバーンナウトしてしまうので、内科も小児科も診られる医師が必要だろう。そこで質問というかお願いをしたい。色々な言葉が混在して混乱しているのだがネーミングが非常に大事だ。クリニックベースや中小の病院で働くんだということを国民がイメージしやすいように、プログラム名称を考えてアピールしていただければ」
土屋
「技か心かというスライドがあったけれど、ウチのような専門病院だと技だけで心がないという医師がいてトラブルになったりしている。バランスよく両者が必要だろう。皆さんのお話を伺っていて、総合医に一番必要なのは、内科診断学的な素養が求められているのかなというのが印象だ。そこである程度の診断が確実についてくるのであれば専門医としても高度な検査だけしてすぐに治療に入れる」
有賀
「3つの学会のメンバーはそれぞれ、どれぐらい重複しているのか。救急医学会は集中治療学会と、かなり重複していて、それを見れば、なるほど大病院の医師が中心になっている学会なんだなということが分かる」
小泉
「プライマリ・ケア学会が一番老舗で医師以外のメンバーも一番多い。地域でグローバルな家庭医を念頭に活動しているのが家庭医学会であり、私たちは大病院や大学病院の医師が中心になっている。コアな部分はかなり重なっているけれど」
有賀
「日本の救急医学会が発展したのは、制度としての3次救急、救命救急センターの整備が進められたことで政策的に支えられてきた。診断をもっぱらにする方がいて、多くの方の健康に関する相談は受け持つんだと制度に書いて、この国の形はこうなんだとするべきと思うか」
前沢
「国民の方が分かりやすく利用しやすい形にするには、ある程度フリーアクセスを制限してガイドする必要はあるのかなと思う」
山田
「概ね同じ」
有賀
「家庭医は高齢者医療やがん医療をやって、信仰とか死生観の領域に踏み込むのかなと思っていたのだが、先ほどの川越先生のお話だと、アクティブな人達でもそういうのが難しいんだと言う。私としては、当然のことながら死に際のお坊様の代わりに看取りまでやるんだと思っていたのだが」
山田
「まったく仰る通り。看取りこそ長くつき合った医師がやるべきで、一番実力を発揮できる場面だと思う。その人たちが、まだ技量がないからそういうことを言うのだろうが、オランダでは安楽死もGPの役割になっているくらいだ」
土屋
「これで大体聞き取りは一巡した。次回は班員の中で意見を交換して合議に持っていきたい。最初の回で述べた外国の事例に関して、個人的には何人かに聴けたのだが、なかなかこの場に来ていただくということにはならなかったので現在マッキンゼーに諸外国の例の取りまとめを頼んでいる。お金は余りないのだが、社会的に意義のあることなのでと協力していただけるようだ」
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