医道審議会医師臨床研修部会
富永
「大学はむしろ後期研修を頑張ってもらえばよいと思っていた。実際、中部地方や東北地方の古い大学には、初期は市中病院に出して後期段階で入局させる所もあった。必ずしも大学中心でなくとも、地域の病院でも立派に研修できる。むしろ大学は雑用が多いとかいう声もあったと思う」
河野
「後期研修にプライマリケアだけだとつながらないということであって、別に大学でなくとも構わない」
小川
「プライマリケアを習得すれば良い医師になれるかのような議論が行われているが、今は黒澤明の赤ひげの時代ではない。むしろ必要なのは臨床判断。入院させるのか帰していいのか専門医に診せるのか、それからファーストエイド。これが到達目標のはずだ。そもそも臨床研修でやならきゃならないことは医学部教育の中でも十分にできるようになっている」
矢崎
「到達目標の達成をどう担保するか。内容は小川先生の言う通り。それと今、社会的に注目されているのは地域医療をどう担うか。初期だけで議論してはダメで、大都市の大きな病院は十分に管理型になれるだろうが、地方は地域ごとのコンソーシアムが必要で、その核には大学病院がならざるを得ないだろう。しかし気を付けないといけないのは、いまだに過去の大学病院のイメージでものを語っている方々がいる。大学病院の方々には意識改革をしていただいて、地域医療をサポートするという考え方で動いていただくと地域の方々も安心するだろう。開かれたシステムで責任を持ってやっていただきたい。設置主体の違う病院どうしによる群をいかに育てるか。県に枠を預けてもリーダーシップを取れる人はいない。大学の先生方の責任が極めて重い」
小川
「全くその通り。昔のように医局が全てを支配するような大学では既になくなっていることを申し上げたい。もう一つ、医局が悪者であるかのように言われるが、医局にも大事な機能がある。派遣する際の適性・診療能力を判断するのは医局にしかできない。専門家集団の中で能力を評価している。これは行政ではできない。それから人間だから人どうしの相性とか子供の教育や親の介護といったような家庭の事情が必ずある。そういう社会的なことも色々加味して苦心しながら派遣を決めている。頭が下がることであり、それをできるのは医局しかない」
長尾
「精神科の立場から言うと、精神科が必修にされていたのが大きかった。専門性と人格とが必ずしも一致しないのは皆さん御存じの通り。精神疾患を併発している患者さんを露骨にイヤがる専門医が多い。精神疾患のある患者さんをコンサルトしようとした場合も同じ。医師の中にも精神疾患に対する偏見が強いので、そういう風にならないように実態を早くに知っていただくことは引き続き必要だと思っている」
- 前の記事臨床研修検討会6その2
- 次の記事医道審議会医師臨床研修部会2日目