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ニュース〜医療の今がわかる

韓国の患者会は、こうして成果を挙げた ~グリベックの場合


〔大谷〕
 話を聴いてフツフツと沸いてくるものがある。私が骨髄バンクを作ろうとした時も無謀だと言われた。国が動くわけない、健康な人に全身麻酔かけて採取するの、と。それでも私は助かりたかったから必死だった。本音を言えば、他人がどうなってもいい、自分が助かるためだったから必死だった。当時グリベックがあったら自分も移植してないだろうしバンクを作ろうともしてないと思う。

 私自身、グリベックの問題に首を突っ込んでいるのは、同じ病気を持つ人間として放っておけないという思いがあったからなんだけど、袋叩きに遭うのを覚悟で言わせてもらうならば、現在の白血病の患者は何をしているんだろうという思いもある。

 姜さんの話を聴くまで、民間人が薬価を下げられるなんて思いつきもしなかった。反省している。私も一生懸命やっていたつもりだったけど、やはりグリベックは他人事だったから考えつかなかったのかもしれない。いずれにしても、その手法は日本人にとって目からウロコだ。

 制度の中で多少薬価が安くなったところで総個人負担は変わらないからと思っていたけれど、もしかしたら個人負担が変わるぐらいまで安くできるのかもしれないと闘争心が沸いてきた。皆さんも、安くなった方がいいでしょう。どうしたらよいと今の段階で結論は出ないけれど、やれることはやっていかないといかんと自己反省している。

 骨髄バンクをつくった時のエネルギーと同じものがどこまであるのか、もう20年も経っているから分からないけど、しかしできる限りお手伝いしていきたい。ノウハウもお伝えできるものはしていきたい。先日、移植をして15年目に再発した人がいた。ショックを受けていたから、でも今はグリベックっていういいものがあるんだよと教えてあげた。その意味では、自分もいつ再発するか分からないんだから他人事ではない。今やるべきことはいっぱいある。

 私が移植した時、主治医は家族に再発する可能性が高いと言った。母親は、それなら無理させたくないからバンクの運動をやめるように言ってほしいと頼んだらしい。でも、主治医は自分がバンクをつくりたかったというのもあったんだろうけれど、再発すると思っているからこそ好きなことをさせてあげたらどうだろうと言ってくれた。お陰で、どんなに辛くてもスケジュールがいっぱいで頑張らなくちゃいけなくて、そして今までやってこれた。

 先ほどの崔さんの話ではないんだけど、いつ何で死ぬか分からない。だったら死ぬまでにやるべきことをやって豊かに生きたい。病気になった時に自分たちの身を守れるようにやりたい。お手伝いしていきたい。

〔野村〕
 私はグリベックではなくインターフェロンでやっているけれど、かかる治療費の問題は同じで月々44,400円だ。厚生労働省の人と話をすると、ちゃんとそこまで安くなるようにセーフティネットがあるではないかという言い方をする。たしかに、がんの人なんかと比べると高くない。たしかにそれが数ヵ月のことで済むならいい。しかし現実は死ぬまでずっとだ。
 
 たとえば幼稚園のお子さんがいるお母さん。子供が小さい時はいいけれど、高校や大学に行く時になったら大変だ。そういった将来の不安に対する心理的負担はものすごい。塾に行かせられないし、大学へも行かせられないということになる。そこで署名活動を始めた。

 国は、特定疾病の対象を他にはもう増やせないと言う。実は症状が安定していれば3ヵ月処方にしてもらって3ヵ月で44,400円という方法もある。それなら月々に直すと1万5千円弱。ただし、医師がそうしてくれた場合に限られるし、症状が動いている場合にはやはり毎月行かないといけない。だから何とか特定疾病にしてもらいたいということで動き出した。

 日本の患者会にも色々ある。フェニックスクラブは本音を交流しましょうという集まり。いつ死ぬか分からないから代表を決めず会則も決めず会費も払える人だけ2000円払いましょうという風にやってきた。今度のように運動をしようと思うと困る。運動するようなシステムがない。だから、運動のためだけに特化してCMLの会をつくった。

 厚労省へ行くと、日本の医療費全体が大変だからと言う。しかし我々から見れば削るべき所は他にたくさんある。薬価を下げればいいのだと思う。

〔田村〕
 一昨年12月にできたばかりの会だ。患者の気持ちを正直に話し合って、イキイキと生きていこうという趣旨。白血病の患者会は他にもあるのだが、治療法が全然違う。CMLはグリベックのお陰でQOLは大変向上したが、長期に飲まなければならないので様々に悩みも出てくる。

 日本の医療だと、先生と話をするのが分のオーダー。訊きたいことも聴けない。そこを患者同士で埋めていく。経済的には3ヵ月処方をうたってきた。地域差があるし、病院によっても医師によっても違うので、まずは3ヵ月処方ということができるんだと患者の側で認識して主張しようと活動してきた。それが発展して野村さんの署名になった。

 我々の夢は、治癒につながる薬の開発。そのためには患者、医師、製薬会社がコラボレーションしなければならないと思っている。協調してやっていこうというのがスタンスだ。日本には8000人のCML患者がいるといわれる。よりよい薬や方法をめざして活動していきたい。

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