韓国の患者会は、こうして成果を挙げた ~グリベックの場合
〔野村〕
日本の患者会は、目標も製薬会社との関係もみな違う。今日は韓国の運動を教えてもらったけれど、これを日本でどうするかは我々で考えるべきだろう。
〔田中〕
土屋先生(了介・国立がんセンター中央病院院長)、ひとこといただければ。
〔土屋〕
私は外科医だし、自分も大腸がんはしたことあるけれど手術だけで、抗がん剤を飲み続けるようなことにはなってないので今日は後ろで黙って聴いていようと思ったのだけれど、ご指名なので感想を述べる。
本日の会合はタイトルからして素晴らしい。患者さんたちが自立していこうという表明なんだと思う。ひるがえって医師を考えてみると、個々には自立した人間も出てきているが医師全体としては自立していない。ただ厚生労働省に振り回されているだけなのが現実で恥ずかしく思う。
大谷貴子さんが自分のために必死だったと言った。そのようなエゴ丸出しが大事なんだろう。エゴとエゴとがぶつかりあうところからしか何も始まらない。これまで医師は格好いいことだけ言って、したり顔で済ませて、厚労省に反対ばかり言っている、そんな集団だった。医療崩壊の一番の原因は日本の医者がしっかりしてこなかったことだ。医師というものが総体として信用されてなかったからだ。
グリベックの問題にしても、そもそも医者は保険制度のことをほとんど知らない。自分たちが処方する薬がいくらか、手術代がいくらか知らない。学校でも習わない。もちろんそれを考えながらやられたら困るというのもあるんだけれど、知った上で超越することが必要なのだが、自分の手術代がいくらか知らない外科医が多いというのはマズい。
昨日も財務省の会合で、長いこと中医協の委員だった大学教授と隣り合わせたのだけれど、彼が「皆保険制度まで患者が治るまできちんと面倒みるようにしなければいけない」と言う。こんな人が長く中医協の委員をやっていたんじゃ、保険制度が間違うわけだと思った。治ると思っている。そうではない。今、入院してくる患者さんの半分ぐらいしか治らない。亡くなって退院する方もいるが、それ以上に退院しても継続して治療していかなければいけない人が非常に多い。それなのに治る前提で保険制度をつくっていたらうまくいかないに決まっている。
ひとつだけ今日の話で気になったのは、薬価を下げるのと患者負担を下げるのとは分けて考えないといけない。薬価というのは、適正な対価である必要がある。そこを薬価にだけフォーカスすると厚労省の怠け官僚の思うツボだろう。製薬会社と患者をケンカさせる構図で、これにはマスコミも飛びつく。しかし製薬会社も会社を維持できなければ次の薬をつくってくれなくなる。誰がどう負担するのかとは分けないといけないだろう。
闘い方が同じでなければいけないというものでもなかろう。韓国では医師もゼネストをする。日本では、これだけ団結心のない医師集団なので無理だ。いいとこ取りできればいいのでないか。