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在院日数短縮した回復期病院も-東京都脳卒中連携パス会議


■FIMの高低は利得率との相関なしか
東京都リハビリテーション病院 柳原幸治副院長
  
正直申し上げると、実際に主治医がパスについてどれぐらい意識しているかというと、実際の診療において「この方はパスの患者である。そうでない」という区別は、入院審査の段階からあまり意識していないというのが実際。今回は2008年7月から今年6月30日にかけての、410名の脳卒中患者についての状況を報告する。
 
当院では、Metropolitan Stroke Network(MSN)研究会のパスと区東部のパスを中心に使っている。それぞれの記入場所について、医師、看護師、ワーカーなどはここ、というように職種で分担して書いている。もう一つのパスも一緒で、それぞれの部署に分けて書いてもらっているというやり方を取っている。
 
実際のパスの流れについて。入院時に医師がパスを受け取ったらナースには口頭で、リハスタッフには処方箋で連絡する。医事課のクラークがいるので、必要なこと書いて渡す。クラークは入退院伝票にパス印を付け、カルテ背表紙にパスシールを付け、パスケースに入れて医事課のクラークの棚にある引き出しに保存している。入院してそれぞれのスタッフが一週間以内に分担したところを記入するようにしている。退院時はパスケースに入ったパスを取り出して、一週間前には必要なことを病棟にて記入する。そして、医師が患者に説明し、同意書にサインをもらう。クラークは、同意書とパスをコピーして、原本はカルテへ、コピーしてそれぞれ患者、管理病院に渡すというふうになっている。
 
連携病院紹介患者とパス.jpgのサムネール画像1年間で410人の脳卒中患者の退院があった。その中でパスが使われたのは、MSNが15、区東部は43と、合わせても14%。実は、年間203ぐらいの病院から患者を受けるものだから、パスが使われていることが少ないのだが、東部やMSNの病院でも実際はパスを使わずに送ってきているところが多い。MSNだとパスを使っているのが15例に対し、使っていないのが33例。区東部だと使っているのが43例、使わなかった患者が68例。患者の40%は管理病院から送られているのだが、パスを使っているのはこの程度という状況。
 
今年3月からパスを使用する患者が多くなってきた。退院先に関して、当院はパスを使う前から在宅復帰率は8割ぐらいだった。パスを使用した患者の在宅復帰率は87.9%、使用しなかった患者は77.3%と、統計的優位差はない。在院日数に関しても、パス使用が77.5日、パスなしが75.6日と、パスが始まる前の一昨年も大体こんなものだったので、パスを始めたからとか、使っているから短い、ということもなかったというのが実情。
 
FIM.JPGFIM(機能的自立度評価表:Functional Independence Measure)で検討してみた。2月以降のデータだけだが、82人の患者について、パス使用が92.5、パスなしが83.2。これについても統計的優位差はない。パスが使われているから若干高い気もするが、そうでもない。FIMの利得について。これは入院時FIMと退院時FIMの差を、入院期間で割ってみた。パスを使われている患者の方が、パス使用が0.168/日、パスなしが0.191/日と、パスがない方が若干伸びがいいのだが、これについても統計的優位差はない。蛇足だが、入院時FIMが引くければ利得が高いかというと、低い患者が少ないから申し訳ないのだが、これを見る限りは、低い患者が特に利得が高いということはない。FIMが60ぐらいの患者を集めて利得率が高いかというと、そうでもなさそうな結果になっている。
  
紹介元を見ると、連携なかったのは47病院。連携あった病院に関してMSNは13病院から紹介いただいて、区東部は6病院から患者を紹介していただいた。
   
今回ざっと見ていて気付いたのは、脳卒中じゃない症例がパスで送られてくるということがある。情報提供書じゃなくて、パスとして送られてくるのがあった。急性散在性脳脊髄炎、頭部外傷、脊髄梗塞が1例ずつあった。頭部外傷は脳血管疾患ということにはならないだろうと思うが、これが医事課の方になると、脳血管疾患に分類してしまうことがままあるようで、なおかつ疾患別リハも脳血管障害等のリハとして可能。本来は外すべきだろうけど、脳卒中の中でも出血や梗塞、クモ膜下出血でだいぶ病態が異なるので、全部一緒くたでパスのバリアンスを検討してもいいのかどうかと考えている。あるいは頭部外傷も入れて、疾患ごとに検討すればよいだけということになるのかとも思った。
 
 
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