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在院日数短縮した回復期病院も-東京都脳卒中連携パス会議


■パスは患者のためのもの
医療法人社団陽和会武蔵野陽和会病院医療福祉相談室 石井いほり氏
 
回復期から在宅へ帰すという立場で話させて頂く。当院は一般急性期53床、回復期リハビリテーション病棟50床を持ち、2次救を担っている。診療所や老人保健施設、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所を開設し、医療・保健・福祉の連携のもと地域柄での生活を支援している。
リハビリ体制としては、「脳血管疾患Ⅰ」「運動器Ⅰ」「呼吸器Ⅰ」を算定。病棟にはリハ医1人、看護師19人、看護助手19人、理学療法士13人、作業療法士9人、言語聴覚士4人、歯科衛生士2人、医療ソーシャルワーカー3人がいる。

北多摩南部脳卒中ネットワークが発足した後、連携パス作成の検討に入り、2006年からは病病連携の接着パスを使い始めた。2006年11月から07年12月までのデータとしては、入院患者が288人いるうち、パスの利用は86人、非使用は202人。発症から入院までの期間はマイナス7.2日で、平均入院日数はマイナス11.2日。在宅復帰率は微増し、地域資源の有効活用も見られた。

07年7月より、脳卒中ネットワークは在宅分科会を発足し、地域の医療や福祉のメンバーが月に2回の会合を持って在宅支援パスの検討を始めた。結果、オーバービューシートを加え、病病連携パス、地域連携パス、フィードバック用シートの4枚を「地域連携計画書」1から4として運用するに至った。地域連携診療計画管理料、地域連携診療計画退院時指導料の申請も受理された。08年6月から09年5月までの実績としては、脳卒中退院患者は162人、地域連携パスをつくくって渡した患者は133人。このうち地域連携診療計画退院時指導料を算定できたのは114人。在宅のパスがとてもいいということで、算定する以外にもほしい方には渡していたので少し誤差がある。

リハⅠを算定しているが、回復期病棟には昨年10月から成果主義が導入された。在宅復帰率は79.6%、重症度17.5%、改善率74.4%となり、連携パスを有効に活用して回復期本来の使命を果たしている。このようにできている背景としては、パスの運用以外の要因として、▽パス作成の過程における関係作り▽院内の職種間の関係作り▽パスに沿った地域での維持期資源体制強化▽行政の積極的なかかわり-などが起因していると思う。武蔵野市はパス作成検討会に積極的に参加して下さったり、市の広報誌を使って市民への連携パスに関する広報をしていただいたり、ケアマネ研修で在宅パスを周知していただくなどバックアップしていただいた。
 
在宅復帰とは言うものの、維持期でのリハがなく在宅に帰る方もいる。有効な在宅支援のためには、法人内で取り組みを進めている。介護老人保健施設ではリハスッタフを2人から10.5人に増員し、必要な時すぐ対応できるデイケアにするため20人から徐々に増やして80人に。訪問看護ステーションでは訪問リハ要員を増やし、居宅介護支援事業所はケアマネを3人増やし、このうち2人は看護師資格を持つスタッフにして回復期退院後の医療ニーズにも対応できるようにした。
 
ここで見えてきた今後の課題として、自立で帰った患者さんについても在宅で帰ってから困っている方がいるのが後の調査で分かった。自立していても、その患者さんこそが介護する側だったり、家族背景にもいろいろあった。MSWが介護保険だけでなく、在宅介護支援センターと地域で連携していく必要がある。私たちも「問題ない」と思って退院時カンファレンスを組まないで退院時ムンテラですませてしまうことも多いが、カンファして諸機関と連携する必要性を感じている。パスは生もので、患者さんと一緒に成長していくもの。在宅生活の中で変化する情報を地域で確認していく仕組みが必要。他の地域からのパスの患者さんも来るようになったので、複数のパスについて広域の合意が必要と思われる。
 
多くのパスがあることを知り、こんな疑問を持った。「パスは誰のもの?」と。ささいなことかもしれないが、私たちの地域では原本は患者が持っていいる。地域によっては、病院が保管しているところもあるよう。パス作成は診療報酬という動機付けもあるのかもしれないが、患者さんがパスを手にしたとき、「今まで自分のことなのに、医療のことは紙や字で目にしたことがなかった」と励みにしておられた。パスは連携してよりよい医療やリハビリを提供する私たちのための情報でもあると思うが、その前にパスの主体はご本人。最終的には地域の生活者として使うご本人のもの。だから私たちの地域では本人に渡している。私たちの地域では連携パスは本人のものと言う発想から検討してきたといえる。
 
最近参加した医療マネジメント学会でも、パスのIT化が花盛りでした。病院間や病院と介護保険事業所間で便利に情報共有していくことだけが地域連携計画所の意味なのだろうか。当地域が目指したのは、医療・福祉・保健関係者が本人とともに歩むパスだと思う。回復期の医療ソーシャルワーカーとして、このパスを武器に、患者さんの安心の在宅復帰、在宅生活に取り組みたいと思う。
 
 
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