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中医協の位置付け、見えないまま

7月29日の中医協02.jpg 「中医協の位置付けの話だが、以前、確か遠藤会長は改定率についても内閣に対して発信することも考えたいというような......」「いやいやいや、そんなことは申し上げていない」─。中医協の位置付けが見えないまま、足踏み状態の議論が続いている。(新井裕充)

 2010年度の診療報酬改定に向け、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)は7月29日、今後の審議の進め方について意見交換した。

 中医協は2004年のいわゆる「中医協汚職事件」を契機として権限が縮小され、社会保障審議会(社保審)の「医療部会」と「医療保険部会」が策定した基本方針に沿って、具体的な点数設定を議論すると改められた。

 しかし、実際にはそのように進んでいない。前回の改定を振り返ると、「医療部会」は各団体が厚労省に陳情したり現状を訴えたりするガス抜き会議で、「医療保険部会」は財政規律の考えにお墨付きを与える会議だった。
 中医協の位置付けも見えない。中医協は社保審の基本方針に基づいて点数設定を行うこととされているが、具体的な点数設定は厚生労働省の保険局医療課が行う。どの点数にいくらのお金が投じられたのか、医療課の机の中に隠されているような状況で、国民からは見えない。

 また、改定を決める上下関係から言えば、社保審の両部会(基本方針)→中医協(点数設定)だが、08年の前回改定では、07年8月に「中医協」で診療報酬改定の検討項目を決定した後、9月になってようやく社保審の両部会で議論がスタートした。基本方針の下書きは中医協で最初に議論された。このため、社保審と中医協との関係もあいまいだ。

 しかし、今回は社保審の両部会が7月に開始しているため、「社保審の両部会が重視されている」との見方もある。ただ、社保審は厚労省が所管しており、中医協の事務局も同省が担当。つまり、3つの会議はすべて厚労省主導で行われるため大差はない。前回の改定は保険局医療課のペースで進められた。

 もし、今回からこれらの会議の役割を見直すならば、中医協を日本医師会(日医)のためのガス抜き会議にして、実質的な審議を社保審の両部会で行うことも考えられる。
 前回の改定後、病院団体の関係者などから「日医が中医協の審議を大幅に遅延させている」「DPCでゴネているので、入院基本料の議論が全く始まらない」などの不満が噴出している。「改定の主戦場を社保審の両部会に移すべき」との声もある。

 こうした中、厚労省は7月29日の中医協総会で、社保審の両部会で出された主な意見を報告。日医常任理事の藤原淳委員が「バイアスがかかった取りまとめをしているのではないか」などと批判した。

 その後、議論は社保審の両部会と中医協との関係や今後の審議の進め方(スケジュール案)などに移った。藤原委員(日医)が「中医協の位置付けの話だが、以前、確か遠藤会長は改定率についても内閣に対して発信することも考えたいというような......」と言うと、遠藤会長が「いやいやいや、そんなことは申し上げていない」と強く否定する場面もあった。

 詳しくは、次ページ以下を参照。なお、次回の総会は8月下旬の予定。

 【目次】
 P2 → 「基本方針は両部会で一本化されるか」 ─ 公益委員
 P3 → 「議論するテーマを出していただきたい」 ─ 患者側委員
 P4 → 「粗ごなし作業がぜひ必要だろう」 ─ 支払側委員

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