救急受け入れ不能の理由、「実は分からない」 ─ 厚労省
■ 「医師が多ければ受け入れ先が決まるわけでない」 ─ 厚労省
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
それでは、委員の皆様ご着席でありますので、ただ今より、第142回中央社会保険医療協議会・診療報酬基本問題小委員会を開催したいと思います。まず本日の出欠状況ですが、本日は高橋委員の代理で全日本海員組合の清水保さんがお見えになっています。
それでは、議事に移りたいと思います。本日、一番目の議題は「周産期・救急等について」ということでありますが、これまで周産期・救急につきましては、7月の基本小委で実態についての報告がありまして、それに基づいた議論をして、それに引き続くというものです。
本来、改定についての議論は社会保障審議会の医療部会・医療保険部会で決定された方針に基づいた議論ということでありますけれども、まだ両部会、基本方針については検討中、審議中ということでありますが、「必要になる、必ず問題になるという内容については中医協でも議論を進める」ということの合意があったわけですので、それについて7月に引き続いて本日、議論を進めていくということであります。
ただ、夏休み明け以降、いよいよもって22年度改定に対して具体的な議論をしていきたいと思いますので、そういう意味で、より具体的な議論に移りたいと思います。
今回、改定に伴ってさまざまな課題がございますので、非常に効率的な議事の運営をしていきたいと思いますので、皆様にもご協力のほどをよろしくお願いいたします。
それでは早速、周産期・救急等につきまして、事務局(保険局医療課)から資料がだされています。7月にも資料が提出されているわけですが、それも含まれている資料のようですが、追加されたもの(論点)もございますので、これについて、事務局から説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
▼ 何度、同じ資料の説明をしたら気が済むのだろう。周産期・救急の資料は社会保障審議会の医療部会と医療保険部会でも示され、それぞれ30分以上の時間をかけて説明した。中医協でも既に説明済み。傍聴席では、佐藤課長の説明中に離席する姿が目立った。
[保険局医療課・佐藤敏信課長]
資料は4種類ございます。まず、「診─1─1」(周産期医療体制の確保)という資料。それに関連する「参考資料」、それから、「診─1─2」(円滑な救急医療体制を構築するための救急医療機関への支援)という資料。それに関連する「参考資料」が付いている。こういう構成になっています。
テーマは大きく2つあります。1つは「周産期医療体制」というもの、後段が「救急医療一般」ということになります。まず、「診─1─1」の周産期医療体制の確保から説明させていただきます。(中略)
救急搬送患者のうち、医療機関の受入状況でございますけれども、(総務省)消防庁と厚生労働省が共同して調査をしたものが(資料)7ページに書いてあります。
そこにありますように、救急の中で産科・周産期の傷病者といわれるものですが、ご覧いただきますように、1回で受け入れが決まったところが83.7%です。また、2回から3回までが11.7%ですから、大体ざっと見ますと95%ぐらいの例では3回目ぐらいまでの照会で決着が付いているというか、受け入れていただいているのですが、0.3%ぐらいの例では、11回以上、「受け入れていただけますか」「受け入れませんか」ということになっている。
それから、(救急隊が)現場に滞在した時間区分ごとの件数も書いてありまして、「どこで受け入れてもらえるか」ということで、救急車を停めて、現場で待機した時間なども書いてあります。たいていのケースでは30分未満、つまり「15分未満」(62.5%)と「15分以上30分未満」(31.2%)を足すと、大体93から94%ぐらいあります。たいていのケースでは30分未満なんですが、「120分以上」なんていうのも、0.04%ある。「60分以上120分未満」(0.6%)を入れますと、0.6から0.7%近くある。
その下の日本地図(照会件数の全国分布)ですが、一般的にはこうした、一般の救急もそうでしょうし、産科救急もそうでしょうが、こうやって医療機関の受け入れが困難になる例、あるいは短い時間で受け入れ先が確保できない例というのは、たいていは「医師不足があるのではないか」とか、「医療機関の数が少ないからじゃないか」というふうに思われがちだが、実を言うと、この図を見ていただくと、(照会回数が)4回以上の事案や、(現場滞在時間)30分以上の事案が意外に首都圏とか、大阪圏のように、比較的人口が多く医師も多く、医療機関も多いはずの所で4回以上の事案、30分以上の事案があるので、なかなかこの問題、難しいということが理解できると思う。つまり、単純に医師が多ければすぐにすんなり受け入れ先が決まるというわけでもない。かなり難しい事案であるということが分かると思う。
それから、(参考資料から)本文にもう一度戻りますが、総合周産期母子医療センターの約8割において、NICU(新生児集中治療室)の病床利用率が90%を超えています。
母体、新生児搬送の受け入れができなかった主な理由は「NICU満床」となっています。これは9番目のスライド(参考資料)になります。
(母体の)受け入れができなかった主な理由として、センター数49で、「NICU満床」の割合は92.5%。もちろん、「診察可能なお医者さんがいなかった」という理由も(12センターで)22.6%。
新生児の場合は、「診察可能なお医者さんがいなかった」という理由が11.9%ですけれども、「満床」といわれる部分が(41センター、97.6%で)かなり多い。こういう中で、先ほども申し上げましたが、NICUの整備目標がつくられているわけです。(以下の説明は省略。7月の基本問題小委員会、社保審の医療部会と医療保険部会での説明とほぼ同じ内容。説明時間はノンストップで約40分)
▼ 救急医療の集約化に対する医政局の執念はすざましい。佐藤課長は2008年7月、医政局指導課長から保険局医療課長に異動になった。医政局といえば、補助金がらみの箱モノ行政を繰り広げる代表格ではないだろうか。最近では、PICU(小児集中治療室)の全国整備に気合を入れている。救急医療の集約化について現場の医師に話を聞くと、賛否両論が真っ二つに分かれる。「ドカーンとつくればいいんだよ」「ドクターヘリをもっと増やせ」という声がある一方で、「ハコをつくったって医師がいなきゃ駄目でしょ」「働き続けられる環境整備が先決」などの声もある。「救急はヒトかハコか」という問題は非常に難しいが、同じ金を突っ込むなら「ハコ」にしたほうが、役所にとっては何かと都合がいいのかもしれない。
[遠藤委員長(中医協会長)]
(長い説明がようやく終わり、不機嫌そうな低い声で)はい......、ありがとうございます。ご丁寧な説明......でありました。まあ......、よく分かりましたが、同時に時間のほうもなくなってしまいましたので......(会場、爆笑)。
ただ、重要な案件でございますので、あまりデッドラインをですね、決めずにですね、十分な議論をしたいと思いますので、よろしくご協力のほど、お願いいたします。効率的な議論をするために、まずは周産期医療のほうからご質問、ご意見を承りたいと思います。
今回、事務局(保険局医療課)から出された資料の中には、「論点」というものが出てきたというのが新しい点ですので、基本的には、この「論点」をめぐっての議論になると思いますので、ほかに追加すべき内容、あるいは違う視点から、あるいはこの「論点」について、どういう考え方を持つのかというのがベースになると思いますが、多々、(周産期・救急医療の)環境についての説明がございましたので、質問、ご意見、ご自由にお願いいたします。はい、竹嶋委員、どうぞ。
[竹嶋康弘委員(日本医師会副会長) ]
まさに......、医療のですね、原点というか......、地域医療提供体制の全部を含んだ極めて重大な......、周産期、救急は、問題ですので、ここはしっかり中医協......、中医協の在り方を問われる! 1つの大きな......、私は、基本的な......(略。地域医療の充実が必要であるといういつもの演説を7分間)。
▼ 竹嶋委員にとって、これが最後の中医協になることを願う。なお、中医協総会委員として関係者席にいた邉見公雄氏(全国自治体病院協議会会長)は、竹嶋委員の演説中に退席。以下、「周産期・救急は診療報酬だけでは限界がある」との意見が相次いだ。一息付いたところで、牛丸委員。
【目次】
P2 → 「医師が多ければ受け入れ先が決まるわけでない」 ─ 厚労省
P3 → 「受け入れ対応の改善が大変重要」 ─ 日看協