文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

「わが国の医療費の水準と診療報酬」 ─ 中医協・遠藤会長の講演 (2)

■ 診療所に有利な資源配分がされている
 

 これ(スライド)は、2006年の医療者の人数と医療費のシェアを見たものです。医師数と看護師数、准看護師数、それぞれが病院と診療所にどのように配分されたのかを見ました。
 「医師数1」は、(厚労省の)「医師・歯科医師・薬剤師調査」から取ったものです。これは実は、実際に働いていないような、あるいは働いていてもほとんど患者さんを取らないような診療所も入っているので、多少調整が必要なのですが、正確なデータなのでこれを使いました。(病院)64%対(診療所)36%です。

 「医師数2」は、私が勝手に労働生産性を考えて、29歳以下と70歳以上の人数を7掛けして計算しました。「なんで7掛けか」というと、私の全くの当てずっぽうですが、7掛けするとちょっと変わります。病院のほうの比重がちょっと高くなり、診療所がちょっと低くなります(病院64.2%、診療所35.8%)。

 看護師さんは(日本)看護協会のデータを使いました。看護師さんはこれぐらいの配分です(病院88.1%、診療所11.9%)。それから、准看護師はこれぐらいの配分です(病院62.1%、診療所37.9%)。(看護師と准看護師を)両方足しますと、8対2になります(病院80.3%、19.7%)。

 このように、マンパワーだけの比率を見るとこんな感じになるわけですが、医療費(の配分)はこのようになっています。これを見ると、どのような解釈ができるか。
 それはさまざまだと思いますが、やはり私は、この数字だけを見る限り、「診療所のほうに有利な資源配分がされている」という見方をするのが、ま......、素直な見方ではないかなというふうに思います。なぜならば、やはり病院などの場合は、看護師さんの給与が医師の人件費よりも高いわけです。トータルの人数が多いわけですから......、というふうに思います。

 それから当然、設備等々については病院のほうが十分に整えられているわけですから、そういう意味でも病院のほうの資源投入は......、資源投入というのは医療費の配分ですね、さまざまな設備等々の投入が多いのではないか。

 それから、ここの医療費の中には薬代というのが当然入っているわけですが、外来機能を医薬分業で外に出している場合には、この中には入ってこないわけですが、病院の場合には入院患者用の医薬品を購入せざるを得ないわけですから、医薬分業にしていても、入院の医療費の中には医薬品も入ってくるわけです。
 従いまして、総収入に占める医薬品の割合が病院と診療所でどちらが高いかというのは個別に議論しなければいけないところですが、恐らく、入院がある分だけ病院のほうが薬代が入っている可能性があるということになると、薬代を除いたものがマンパワーやその他の機器の費用になる。そういうことを多々考えてみると、医療費の割合から見ると、診療所のほうに有利に配分されているのではないかというふうに私は直感的に思いますけれども、もちろん精査が必要です。もちろん、反対の方もいると思います。

 従って、時系列で見れば、診療所の医療費は相対的に縮小しているわけですが、ある時点での(医療資源の)投入量と実際の費用との関係を見ると、また違った意見がある。

 そうなると、最終的には「どのぐらいの利益率になっているのか」という、そこで調べるのが一番良いのかなということになるわけです。そこを調べるのが「医療経済実態調査」です。


【目次】
 P1 → 診療所から病院への財源シフトは、22年度改定でも議論になる
 P2 → 診療所の医療費のシェアは下がっている
 P3 → 診療所に有利な資源配分がされている
 P4 → 医療法人の診療所との比較が今後のポイント
 P5 → 各科バランスも議論しなければいけない
 P6 → 次期改定の主要課題① ─ 新たな課題
 P7 → 次期改定の主要課題② ─ 従来からの課題


  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
loading ...
月別インデックス