「わが国の医療費の水準と診療報酬」 ─ 中医協・遠藤会長の講演 (2)
■ 医療法人の診療所との比較が今後のポイント
問題は、一般病院と医科診療所の利益率です。「医業収支率」というのがあります。医科診療所は有床と無床で、「個人」「その他」に分けています。なんか、これだけ見ると、すごく(医科診療所の)医業収支率が高いわけです。無床(個人)の医科診療所が35.8%、国立(病院)が0.3%。(このほか、公立は-17.4%、公的-5.5%、社会保険-1.5%、医療法人2.5%)
ただし、これは会計のやり方が違うわけでありまして、施設の院長の収入が利益の中に含まれているわけです。(医科診療所の)「その他」には、ここ(スライドの注釈)に書きましたように、病院の収支率と単純比較はできない。
ですから、「医科診療所が多いじゃないか」ということは言えない。これは誰もが認めるところです。では、どうすればちゃんと比較できるのかというと、1つ考えられることは医療法人の診療所と病院を比較すること。
ただ、残念ながら平成19年度の「医療経済実態調査」までは、(医科診療所の)「その他」の中に、医療法人や市町村立(や国保組合、社会福祉法人、医療生協など)を全部引っくるめている。なので、必ずしも診療所の医療法人だけの効果を出すことはできない。
それでも、(無床診療所の)「その他」は9.3%ですから、(無床診療所の「個人」35.8%に対し)圧倒的に少なくなっている。しかし、違うものが入っているので、この9.3%と、例えば(病院の)医療法人の2.5%を比較するということは乱暴かもしれません。そこのところで、いつも水掛け論になっています、日本医師会との間で。
実は、今回の「医療経済実態調査」では、医科診療所に関して無床、有床それぞれに、「その他」ではなくて、「医療法人」という枠を別途つくりました。従いまして、そこから出てくるデータを見れば、同じような会計基準ですので、診療所と病院の収支率の差が明らかになる。
ただ、設置者の給与をうんと増やせば、収支率は下がりますので、当然、給与も見なければならないということになります。「医療経済実態調査」では、病院と診療所の給与調査をしていますので、医療法人の医科診療所の院長先生の収入も今回は調べています。
それが、どういうふうになるかということですが、現在、「医療経済実態調査」は集計中で、恐らく10月終わりか11月ごろには公表されることになると思います。1つ、その辺が今後のポイントになるかなと思います。今、世の中はエビデンスベースで議論しませんと、診療報酬はなかなか動かない。
【目次】
P1 → 診療所から病院への財源シフトは、22年度改定でも議論になる
P2 → 診療所の医療費のシェアは下がっている
P3 → 診療所に有利な資源配分がされている
P4 → 医療法人の診療所との比較が今後のポイント
P5 → 各科バランスも議論しなければいけない
P6 → 次期改定の主要課題① ─ 新たな課題
P7 → 次期改定の主要課題② ─ 従来からの課題