新体制の中医協で、ついに"開戦"
■ 「医療がどんどん荒廃してしまう」 ─ 鈴木委員
[鈴木邦彦委員(茨城県医師会理事、日本医療法人協会副会長)]
そもそも、DPCの導入は私どもの感覚からしますと、前政権における医療費抑制政策の一環として導入された気が強くいたします。厚労省は、質の向上と効率性が同時に達成されつつあるという評価をされているようですが、やはり質の向上には基本的にコストが掛かるということを前提にしていただかないと、医療がどんどん荒廃してしまうと思います。
私どもは地方の過疎地にある民間病院ですが、なんとか頑張ってDPCを7月から取りましたけど、9月の収支差益はたった12万円ですよ。1か月もう、本当に朝から晩まで頑張っても、1か月に12万円しか病棟として利益が出ないなんていうね、そういう......、もともとが安すぎるんです。
この「調整係数」の廃止ということが言われていますが、そうすると「新たな機能評価係数」というのは、かなり高度医療とか救急医療とか、そういったものをやらないと上乗せされていかない。
そうするとですね、今、なんとか頑張ってDPCになっている病院はもう大幅に減収になるということが予想されますので、そういった地方の医療をさらに混乱させるようなことはやめてほしいと思いますので、ぜひ、調整係数の廃止が行われても、普通にですね、まともにやっていれば経営が成り立つような基本的な収支が取れる点数にしてほしいと、強く希望いたします。
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
はい、分かりました。何か、西岡分科会長、その......、分科会でも似たような議論というのは随分されておられると承知しておりますけれども、その辺について何かございますか?
▼ DPC評価分科会の議論は、ケアミックス病院などの中小病院をいかに規制するかが中心。
[西岡清分科会長(横浜市立みなと赤十字病院長)]
私たちは最終決定まで出す所ではございませんので、それに向かっての提案というのをやってきているところでございます。例えば、これまでにも......。
今回は、(新たな機能評価係数として)この10項目だけになっているんですが、それまでに挙がりました項目は35ぐらいあるんですが、(医療課が)「これは今回は間に合わない」ということで、「時間的に合わない」ということで、この10項目だけに絞らせていただいています。
その中に、例えば、(臨床研修など教育体制を評価する項目について)「大学病院をどういうふうにしてくれるんだ」という意見もあるわけです。そういった意見も出て、特定機能病院の点数をもうちょっと上昇させるべきであるという意見も出ております。
それから、地域での活動にうまく合うような形での「機能評価係数」を引っ張り出せということも項目として挙がっておりますので、それらについて、ずっと議論を続けているところでございます。
▼ 中小病院が潤うような係数はほとんど外された。唯一残っているのは、救急ぐらいか。「救急患者をたくさん受け入れれば点数を付けてやる」という成果報酬のような意味合いの係数だが、具体的な基準について意見がまとまっていない。
[遠藤委員長(中医協会長)]
ありがとうございます。高機能の病院を今後どうするのかという議論、それから地方の病院をどうするのかという議論も十分にされてきているということであります。はい、嘉山委員、どうぞ。
「地方の病院をどうするのか」という議論は、ほとんどされていない。
[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
先ほど私は、大学の立場でお話ししたのではないんです。大学じゃなくて、一般の、普通の病院でもクリニカルリサーチをきちんとやらなければいけないんですね。
日本の医療のレベルが高いのは、普通の開業医の先生も含めて、アカデミックバックグラウンドがあるからなんですよ。だから、大学だけのことを言っているんじゃなくて、例えば、私の専門の脳卒中で言えば、手術しないで、お薬を使っていたほうが、ずーっと経営的にはですね、3倍ぐらい楽なんですよ。
ですから、本当に患者を助けようとしている医者が疲弊しちゃうのは、頑張っても頑張っても、それが医療費に反映されてこないので、それで疲弊していくんですよ。先生がおっしゃった救急もそうです。
ですから、私が言ったのは大学だけじゃなくて、日本の医療全体の問題なので、DPCの考え方を変えなきゃいけない時期に来ているんじゃないかと思います。
[遠藤委員長(中医協会長)]
基本的な考え方うんぬんというのは、まさにこの基本小委の議論ということになりますので、時間はかなり限られてはいますけれども、ここでの議論ということになります。
DPC評価分科会はある意味で、かなりテクニカルなことをお願いしているということであります。その辺の役割分担があるということであります。ほかに、ございますでしょうか。(中略。支払側委員から質の向上を期待するとの意見。また、牛丸委員から「複雑性指数」という名称について指摘あり)
【目次】
P2 → 「何が問題かを議論したほうが国民のためになる」 ─ 嘉山委員
P3 → 「いやいやいや......、あの......」 ─ 遠藤委員長
P4 → 「全国の小さな病院も全部入っている」 ─ 西岡分科会長
P5 → 「DPCを改善しなきゃいけない」 ─ 嘉山委員
P6 → 「医療がどんどん荒廃してしまう」 ─ 鈴木委員
P7 → 「完治に至らないままの退院が増えているという実感」 ─ 安達委員
P8 → 「ちゃんとやっても赤字というのはおかしい」 ─ 邉見委員