新体制の中医協で、ついに"開戦"
■ 「完治に至らないままの退院が増えているという実感」 ─ 安達委員
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
(「複雑性指数」という名称について)大したことではない。最終的に決まればいいので、もしご意見がまとまるようであればそちら(DPC評価分科会)でまとめていただくことだと思います。よろしくお願いいたします。ほかにございますか。安達委員、どうぞ。
[安達秀樹委員(京都府医師会副会長)]
(支払側委員から)「質の向上を期待する」という意見がありました。(新たな機能評価係数として)質の内容を公表するというお話もあったのですが、前から問題なんだと思います。私は新任なので、ここでどれぐらい議論されたか分かりませんけども、議論された形跡は過去にもあると思いますが......。
要は、DPCで平均在院日数を決めている。しかも、それをだんだん短縮していく傾向にこれまであった。その結果としての、いわゆる再発率、あるいは完治に至らないままの退院というものが増えているという実感は、我々開業医にとっても、ご紹介して診ていただいて患者さんが帰ってくる、その後の経過を見ていてもございます。(ここで保険局医療課の佐藤敏信課長が補佐らと相談を始める)
質の評価をするときに、疾患によって難しいでしょうが、再発率というか......。では、もう少し入院期間があったらこういう再発は起こらなかったのかどうか、これも難しいと思いますが......。(事務局は慌てて資料を探している様子)
本当はそれを評価しないと、医療を受ける人にとっては、「治ったという実感はないんだけれども、帰りなさい」という話がしばしばあるわけでございまして、医療現場では。
これはやはり、非常に大きなDPCの1つの......、平均在院日数としての欠点はそこにあるのではないかと思います。質の評価として、そういうものを何かお考えになっていらっしゃるのかどうか。
▼ 日医の主張とほぼ同じだが、執行部の3委員とは説得力が違うように感じる。業界記者の間では、「安達先生によって日医はかなりイメージアップするのではないか」との声も出ている。
[遠藤委員長(中医協会長)]
従来、DPC評価分科会でやった調査の中では、DPCの経過をずっと追っかけていまして、質の評価ということで、転帰とか再入院率の変化みたいなものを追っている。
ただ、ここでの議論では、「それでは不十分だ」という議論も一方であったということで......、何かこの辺について、分科会長ございますか。
[西岡清分科会長(横浜市立みなと赤十字病院長)]
えっと......、これはもう繰り返されたご議論でございますが、私たちの所では、6週間以内の再入院率というものを出しております。その中身が......、再入院の理由というものを挙げています。実際には、DPCが始まってから再入院率が高くなってきております。
その内容は何かと言いますと、化学療法の繰り返しとか、放射線療法の繰り返しが主でございます。その他の「予期しない再入院」はほとんど変わっておりません。がんの化学療法などに関しましては、各施設の方々が非常に効率的におやりになっておられるのでないかと考えております。
[遠藤委員長(中医協会長)]
ありがとうございます。そのような形で従来は評価してきたということです。安達委員、どうぞ。
[安達秀樹委員(京都府医師会副会長)]
今、がんのお話が出ましたが、効率良くやってくださっているんです、大学病院たちも。これは、DPCと直接の議論ではないかもしれませんが、「抗がん剤の効果に限界がきた」という医学的判断が当然ございます。その時に、そこで治療が止まるんです。「あと、受け皿として何があるのか」って考えてみると、結局ホスピスしかないんです。
けれど、ホスピスまでの距離というのは相当ありまして、その方の限られた生活、命というものをどういう受け皿でやるのかというのが、全く今の日本の診療報酬体系も含めた医療システムの中には欠落しているんじゃないか。
そこのところを、非常に個人的に頑張って請け負う療養施設等がごくわずかにございます。ですから、そういう療養施設には例えば、姫路市にある施設は、大阪にある病院からも依頼を受けるという状況になっている。
これはもう、どうしても考えなければいけないことでありまして、がんという宿命的なというか、生命に最終的に終わりがあるということに見舞われた方が残りの部分をどれだけ生き生きと人間らしく生きられるかという点で、ホスピスまでの距離、治療有効が終了した後のホスピスまでの距離、これをどうするのかということは、ぜひ、どこかで議論されるべきだろうと感じております。
▼ 会場内が静まり返ってしまった。
[遠藤委員長(中医協会長)]
重要な......、ご指摘だと思います。DPCの議論ではないと思いますが、療養病床の中で緩和ケアをどうするのかといった、そういう議論の一環になるのかなあと気がしますけれども......。また、ご指摘を頂きたいと思います。(中略)
▼ そういう指摘なのだろうか。療養病床を減らし、在宅医療などの受け皿が不十分な中で平均在院日数の短縮ばかりに力を注いでいることを問題視していると理解したが......。この後、「調整係数」の廃止に伴う激変緩和について、北村光一委員(経団連社会保障委員会医療改革部会長代理) から質問あり。
今後、「段階的」(に廃止)と言っても、何年間にするのか、さまざまな議論をやらなきゃいけませんので、その辺のスケジュール感をお聞きしたいと思います。いかがでしょうか。
[保険局医療課・佐藤敏信課長]
はい、医療課長からお答えいたします。今日、お示しいただきましたが、完璧ではありませんがデータを見ていただいたので、これを基にいよいよ「新たな機能評価係数」の候補案が決まるだろうと思います。
そうしますと、早い段階でここ(基本問題小委員会)にもご提示できるだろうと思います。
それから、「段階的に廃止」と言った場合の「段階的」をどうするかは分科会でもご議論いただくし、また最終的には基本問題小委員会でもご相談をさせていただくことになるだろうと思います。簡単に言えばそういうことです。
[遠藤委員長(中医協会長)]
なかなか、決めなければいけない案件が残っておりますので、できるだけ早く、「機能評価係数」の素案をお出しいただければ、こちらの議論がかなり活発にできると思いますので、その辺のところ......。(西岡分科会長へ)大変申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。邉見委員、どうぞ。
【目次】
P2 → 「何が問題かを議論したほうが国民のためになる」 ─ 嘉山委員
P3 → 「いやいやいや......、あの......」 ─ 遠藤委員長
P4 → 「全国の小さな病院も全部入っている」 ─ 西岡分科会長
P5 → 「DPCを改善しなきゃいけない」 ─ 嘉山委員
P6 → 「医療がどんどん荒廃してしまう」 ─ 鈴木委員
P7 → 「完治に至らないままの退院が増えているという実感」 ─ 安達委員
P8 → 「ちゃんとやっても赤字というのはおかしい」 ─ 邉見委員