新体制の中医協で、ついに"開戦"
■ 「何が問題かを議論したほうが国民のためになる」 ─ 嘉山委員
[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
それでは委員の皆様、全員ご着席ですので、これから第144回中央社会保険医療協議会・診療報酬基本問題小委員会を開催したいと思います。まず、本日の出席状況についてご報告いたします。本日は高橋委員(全日本海員組合中央執行委員)がご欠席です。また、小林剛委員(全国健康保険協会理事長)の代わりに貝谷さんがご出席されております。
それでは、議事に移ります。まずは、「DPCについて」を議題といたします。DPCの議論につきましては、これまでもそうでありましたが、診療報酬調査専門組織のDPC評価分科会と基本問題小委の間で連携しながら議論を進めてまいりました。
現在は、(調整係数の段階的な廃止に伴って来年度から導入する)「新たな機能評価係数」をどのようなものにするかということで、DPC評価分科会で集中的にご議論をいただいており、その経過を適宜ご報告いただいているということでありまして、本日も西岡分科会長(横浜市立みなと赤十字病院長)から経過についてご報告を頂くということになっております。それでは西岡分科会長、よろしくお願いいたします。
[西岡清分科会長(横浜市立みなと赤十字病院長)]
はい、西岡でございます。よろしくお願いします。DPC(分科会)におきまして、「調整係数」の廃止および「新たな機能評価係数」の設定という作業を行っております。
この考え方の基本でございますが、これはDPC制度を円滑導入するという観点から、「調整係数」が設定されました。その中で、この「調整係数」が持つ意味というものがまず、出来高から包括制度へ移行する際の「激変緩和」ということで、前年度並みの収入を確保するということが1つでございます。
この「調整係数」の中には、重症患者への対応能力、高度医療の提供能力等、診断群分類に基づく評価のみでは対応できない病院機能が含まれているということでございます。それを評価するという意味での役割を持っておりました。
平成20年12月17日の中医協・基本問題小委員会の合意におきまして、「前年度並みの収入確保」ということは段階的に廃止し、「診断群分類に基づく評価のみでは対応できない病院機能の評価」という意味の、この役割を「新たな機能評価係数」として評価することとされています。
今般、(新たな機能評価係数の項目を絞り込むため)特別調査を行いました。これにつきまして、ご報告させていただきます。(昨年のDPC評価分科会で)「新たな機能評価係数」の項目を具体的に挙げましたところ、30を超える項目が出てまいりました。
その項目の設定の基本的な考え方が、お手元の参考資料にございます7つの項目です。急性期医療を評価する、あるいは医療全体の質の向上が期待できること、それから社会的に求められる機能、地域医療への貢献......。(中略)
最終的には、「次期改定での導入が妥当と考えられた項目」、これ4項目ございます。これについては、この基本問題小委員会において、「それは妥当ではないか」というお答えを頂いております。
▼ どこで、いつ、誰から「お答え」を頂いたのか。平均在院日数の短縮を評価する項目に対しては、当時の藤原淳委員(日本医師会常任理事)が反発したため、継続審議になっていたはず。「複雑性指数による評価」については、西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)が疑問を呈していた。(詳しくは、こちらを参照)
西澤委員が医療課と調整して了承してしまうことは十分に考えられるが、中医協人事のドサクサに紛れて日医委員の反対意見を無視して進めてしまうやり方には疑問を感じる。
さらに、次期改定で導入するためにデータ分析が必要な項目として6つ挙がっています。今回、特別調査をしましたのは、6つの項目のうちの右欄の黒丸の項目でございます。救急、診療ガイドラインなどについて調査しました。特に、救急医療、チーム医療(を評価する項目)が非常に重要であるということが(同分科会で)指摘されています。
その(特別調査の)結果が資料の「診─1─2」で、データをまとめ上げただけのものでございます。集計したものでございます。それをグラフ化したものが、「診─1─3」でございます。これは、救急医療とチーム医療についての資料でございます。これは最終的なものではなく、さらにこの分析を継続しまして、その分析結果につきましてはこの基本問題小委員会に報告させていただきたいと考えています。グラフの細かい説明は省かせていただきます。(中略。資料に訂正箇所があることを説明)
(データの修正によって)大きな傾向としては特に変化はございませんが、箱ひげ図の幅が少し広がったという傾向が見られます。私どもが現在行っていることのご報告は以上でございます。
[遠藤久夫委員長(中医協会長)]
はい、ありがとうございます。事務局(保険局医療課)から補足はございますか。
[保険局医療課・迫井正深企画官]
特にございません。
[遠藤久夫委員長(中医協会長)]
それでは、ご議論を......と言ってもですね、せっかく調査もされていますので、調査の中身と結果について、どういうことが議論されているのか、簡潔で結構なんですが、少しご説明いただくと議論が、とっかかりができますので、よろしくお願いいたします。
[西岡分科会長(横浜市立みなと赤十字病院長)]
ちょっとはしょりまして、申し訳ございません。まず、このグラフの所を......、(資料)「新たな機能評価係数に係る特別調査」でございますが、ここに救急車搬送に関するデータがあります。(中略)
▼ グラフを示しながら、「毎日救急車を受け入れている病院のほうが救急患者が多い」などと指摘。また、救急患者の受け入れと医療スタッフの配置との関係を調べたグラフなどを紹介した。
救急患者の受け入れを評価する基準をめぐっては、DPC評価分科会で意見がまとまっていない。「救急車の数」という基準に対しては、「自家用車で来院させずに救急車を利用させるのではないか」との指摘がある。また、「救急車」ではなく「緊急入院」にすると、「何を緊急入院と定義するか」などの指摘もある。「救急搬送かつ入院」にするか、さらに「手術ありの患者」にするかなど、意見集約できないまま約1年が経過している。
今回の特別調査は、DPC評価分科会の相川直樹委員(財団法人国際医学情報センター理事長)の強い要望を受け、「複数の診療科における24時間体制」について実施したアンケート調査。相川委員は、全診療科の医師や看護師らが待機していて、24時間365日対応できるような体制、絶対に断らない体制の救急病院を評価すべきという主張をしているが、そんな病院は全国にいくつぐらいあるのだろう......。
(救急外来でのトリアージ体制、診療ガイドラインについて説明した後)さらに、診療ガイドラインと同様に、(院内の)クリニカルパスがDPCを導入いたしまして、かなり多く使われるようになってきております。これについても同様に、平均在院日数との関係等につきまして、どれぐらいの効果が出ているかというのをグラフ化したものでございます。
▼ 西岡分科会長がボソボソと話すので、傍聴席からはほとんど声が聴き取れない。この日の中医協は午前9時の開始だが、一般の傍聴希望者は早朝6時すぎから並んでいる。約1時間半の薬価専門部会で疲れているせいか、眠っている傍聴者も多数発生。委員らも退屈そうに、長い説明の終わりを待っているような雰囲気。
それからもう1つ、チーム医療ということで、どういった人員配置が行われているかというのが......。(ここで嘉山委員が説明をさえぎる)
[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
会長、ちょっと......、よろしいですか?
[遠藤久夫委員長(中医協会長)]
はい。
[嘉山委員(山形大)]
さっきの会議もですね、安達委員(京都府医師会副会長)の質問が13分、そのほかの説明が45分なんですよ。私、西岡先生は学部長会議からよく存じ上げていて尊敬している先生の1人なんですが、この資料はもう(事前に)渡されているわけですから......。(遠藤委員長が発言をさえぎる)
[遠藤久夫委員長(中医協会長)]
(強い口調で)私が(説明を)促して......。(嘉山委員が発言をさえぎる。眠っていた傍聴者は目を覚ました様子)
[嘉山委員(山形大)]
ですから、DPCの医療費を決めるのであれば、何が問題になっているかということを議論したほうが国民のためになると思うんですよ。ですから、そのことを優先していただかないと、ただ座って説明を聴いているだけ。これ、もう渡されている。
ここの委員になっているような先生方のようなIQがあれば分かることだと思いますので、かいつまんで(の説明)で構わないですから。このままいくと何分......。(遠藤委員長が発言をさえぎる)
【目次】
P2 → 「何が問題かを議論したほうが国民のためになる」 ─ 嘉山委員
P3 → 「いやいやいや......、あの......」 ─ 遠藤委員長
P4 → 「全国の小さな病院も全部入っている」 ─ 西岡分科会長
P5 → 「DPCを改善しなきゃいけない」 ─ 嘉山委員
P6 → 「医療がどんどん荒廃してしまう」 ─ 鈴木委員
P7 → 「完治に至らないままの退院が増えているという実感」 ─ 安達委員
P8 → 「ちゃんとやっても赤字というのはおかしい」 ─ 邉見委員