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スーパー総合、「週1件ペースでうまく機能している」-杉本充弘日赤医療センター産科部長

 救命処置が必要な妊婦を24時間体制で必ず受け入れる「スーパー総合周産期センター」の輪番システムが東京都で3月末に開始して以来、12月20日までの間に「スーパー総合」の受け入れに該当すると判断された搬送が36件あったことが22日、都が公表した調査で分かった。「スーパー総合」の1つに指定されている日赤医療センター(渋谷区)の杉本充弘産科部長は取材に対し、「当初は週2件ぐらいを予測していたが、週に1件程度だった。軽傷者がもっと搬送されてくるかと思っていたが、適正に判断されてうまく機能している。無理なく運用できていると思う」と感想を述べた。(熊田梨恵)

■「スーパー総合周産期センター」システムの経緯はこちらこちらを参照
 
 都が独自に指定している「スーパー総合周産期センター」は、脳血管疾患や心臓疾患などで救命処置が必要な妊婦を24時間体制で必ず受け入れる態勢を取っている。東京都が敷く「母体救命搬送システム」は、119番通報を受けた救急隊が患者の状況を確認し、脳や心臓に疾患があるなど「スーパー総合」での受け入れに該当する重篤な状態だと判断した場合、「スーパー」事案として各消防本部に連絡している。現在「スーパー総合」は、日赤医療センター、昭和大病院(品川区)、日大医学部附属板橋病院(板橋区)の3施設が輪番で受け入れ態勢を敷いている。ただ、近隣の総合や地域の周産期母子医療センターでの受け入れが可能になれば、そこに優先して運ばれる。つまり、妊婦がスーパー総合での受け入れに該当する重症ケースで、スーパー総合システムが稼働して消防本部や医療機関が動いたとしても、すべてスーパー総合に運ばれるわけではない。
 
 
 都は同日開いた周産医療関係者の有識者会議に「スーパー」ケースの受け入れ実績を報告した。
 
 システムが稼働した3月25日から12月20日までの間で、「スーパー」該当のケースは36件で、月平均では約4件弱。このうち母親が死亡したケースは、加療後に亡くなった場合も含めて2件、胎児死亡が2件、母児ともに死亡したケースが2件あった。
 
 
 都は3月25日から11月30日までにあった29件の「スーパー」該当のケースを分析。救急隊が搬送先の病院を選ぶのにかかった時間は平均11分で、都は「大体15分以内で決まっている」としている。
 救急隊が通報を受けてから病院に到着するまでにかかった時間は平均43分。伊藤博人委員(救急部救急医務課長)は会合中、東京都の一般救急よりも短時間で搬送できているとして、「この新しい制度でスムーズに乗せて搬送先を決定できるようになり、感謝している」と述べた。
 
 疾患別に見ると、「出血性ショック」8件、「脳血管障害」6件、「産科DIC」3件、「急性心疾患」「多臓器機能障害」「激しい痛み」「切迫早産・流産」それぞれ2件など。
 
 妊婦の週数を見ると、最も多いのは「産褥」で13件、次に「39週」3件、「37週」2件など。母親の年齢は「30-34歳」が最多で11件、次に「35-39歳」10件、「25-29歳」6件など。都は「30歳代後半や40歳代といった年齢が高い方が重篤・重症の例が多い」としている。
 
 「スーパー」に該当するとして運ばれた後、確定した診断が「重篤」だったのが14件、「重症」は8件、「中等症」は7件だった。都は「重篤」と「重症」に当たる22件が「スーパー」に該当するとして、軽度の症状を重度に判断してしまうオーバートリアージは「そんなになかったと分析される」としている。
 
 作業部会でこのシステムについての検証を取りまとめ役も担った杉本充弘委員は会合中、「システムの狙いは病院選定に時間を要しないということが目標だったので、平均11分の選定で、到着まで43分というのは9カ月の間でほぼ満足するような数字でないかと思う。症例の難しさもあって4例の死亡例が出ているのでこれはまた別途、医学的な検証を違う場所で進めていくような問題かと思っている。直近の救命救急センターの協力が大きく、スーパーでない病院の院内連携がスムーズに進めばさらに強力になっていくのではないかと思う」と話した。
 
 
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