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ニュース〜医療の今がわかる

「どこでボタンをかけ違えたのか」 宮台真司氏講演 ~現場からの医療改革推進協議会より


 で、日本における80年代、同時代の勘違い。実は日本では、ほとんど新しい社会運動がいまだに起こったことがないんですね。新しい社会運動の特徴は、生産点から消費点へというように運動場所が変わった。言い換えると、階級闘争的な運動から、環境運動、フェミニズム、反核、消費者運動へシフトするというこの流れのことを言っているんですね。しかし日本では生活クラブ生協、あるいはそれをベースにした生活者ネットワークのようなものが細々とあるだけで、実は生産点よりも消費点における人々の利害に注目した政治運動というのは日本でまだ起こったことがないんですね。これからも、このままでは多分起こらない。というのは、あとで結論の方で言いますけど、日本の社会が再生する可能性はないという風に思います。
 80年代以降、生産点での権益政治をずっと継続してきているんですね。で、民主党がそこから舵を切るはずだったんだけれども、舵を切りきれていないんですね。それは民主党のせいもあるけれども、我々社会生活を送る人間たちの民度の問題もある。

 我々の民度の話に段々入っていくんだけれども、我々は特に男は、企業共同体を居場所と勘違いして、90年代に入って不況が深刻化して弾きだされてからこんなはずじゃなかったって。当たり前だよ、そんなのという問題が分かってなかった。あるいは地域でも、あるいは消費点における相互扶助よりも、中央からの公共事業を頼るというですね、つまり消費点の人間さえ生産に包括するというデタラメな趣向に陥っていたわけですね。

 で、その消費点での勘違いを象徴するのがバイパス開発です。72年、田中角栄の内閣できますよね。78年にロッキードで失脚しますけれども、日本列島改造ということで、モータリゼーションを口実にして、ものすごい開発が行われる。口を開けばバイパスバイパス。その結果、日本では地方都市はすべて例外なく鉄道城下町だったんですよ。バイパス作ったらどうなるかと言ったら、盛り場が移転するんですね。しかも旧住民たちのネットワークのある場所から、新住民のネットワークというかネットワークないんですよ、パチンコ屋と街金と靴流通センターですよ。そういう感じになるわけで、メチャクチャ。

 こういう開発を許容する先進国というのは同時代には全くなかったですね。当然のことながら各地で旧住民と新住民の対立が起こり、それが実はイジメ 問題の背景にもある。売買春の背景にもある。マンション建設反対運動などの背景にもある。皆さん個別の問題にだけ注目して、こうした流れを全然分かってな いんですね。

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