村重直子の眼15 長尾和宏・長尾クリニック院長(1)
長尾
「今回、医系技官がたくさん辞められたということで、すごく閉塞感があるんやろなというのは何となく分かるんですけど、ただ優秀な人から辞めていくというのは、非常に勿体ないことだなと思いますけど」
村重
「構造的に無理があるので、別の場所で活躍した方がよいと思いますけど」
長尾
「やっぱり夢がないというか実がないというか、そういう厚労省になってるのかなという風に見えますね」
村重
「厚労省の仕事は他にも色々あると思いますが、医療に関して言えば、本当に現場に専門家がたくさんおられて、先生のような方々が全国津々浦々にいて医療と国民を守っている現状がある中で、厚労省の仕事はほとんどないと思うんですね。国としての仕事があるとすれば兵站にあたること、要はお金の問題をどうするかということで、そういう仕事は法令事務官やノンキャリの人の方が向いているわけですね。そういうわけで医系技官の役割はないのです。現場のお医者さんや医療スタッフが医療を支えてくださっているわけですから。こんなに素晴らしい人材が全国津々浦々にいる日本は素晴らしいと思っているんですけど、それなのに国が、通知を出したり箸のあげおろしを決めることで、むしろ医療を壊してきている。現場の個別の患者さんは一人ひとり違うので、個別の判断があると思うんですけど、それを全国一律のルールで縛ることで、どんどん壊してきていると思っています」
長尾
「なるほど。まさにその通りで、医者じゃなくてもいいんですけど、なんで卒後5年以内でしたっけ、僕が厚労省に行きたいと思っても絶対に行けないわけですよね。なんでなんだろうと。あるいは先生が1回離れて、10年して、また大きくなって帰って行くというようなことができないでしょう」
村重
「医系技官という終身雇用の形態ではなく、政治任用すればいいんですよ。本当に必要な専門家の方たち、色々な分野、あるいは色々な地域で頑張っておられる方がいて、その時その時でどなたの意見を聴きたいかというのは違うので、誰か1人医師免許を持っている人間がいれば事足りるというわけでは絶対にないですから、そこは政治任用で色々な人の話や意見を聴くことができると思うんですよね。でも現状は、医系技官というものが集団で存在するがゆえに、政治家も法令事務官も現場のお医者さんに直接話を聴いたらいけない、飛び越してはいけないと」
長尾
「そうなの」
村重
「飛び越して聴くことができないんですね」
長尾
「えーっ」
村重
「医系技官が専門知識もないまま現場も知らないまま、でも自分の存在意義に関わるので『知らない』とは絶対に言わないので、知ったかぶりして適当に答えると、法令事務官はその情報を元に法令を作るわけですよ。だからスタートから現場と乖離しているに決まっているんですよ」